こんな所にも人が住むのかと、
君ならどんな顔で驚くだろう。
標高二千メートル弱の霧に閉ざされた林道を
車でジグザグ登山して、もう五時間も山の中だと
およそうんざりしかけた頃に、
右上に開けた風景は、急斜面にへばりついた大きな屋根と、
おしめの揺れる広い庭
そこから過去には家は無く、
実は、未来にも三時間ばかり家が無い
見える風景は、ただひたすらの山の斜面の連なりと、
深いV字谷。
霧の深い日には、木々の育つ音を聞いているしか仕方の無い
そんな場所に、一家族果敢に生きている。
山越えの数キロ四方が生活の場で、
はるか昔ならば、海を見ずに一生を終えてしまったような
そんな日々の繰り返し。
のどかと言うには厳しい
激しいと言うにはのびやか
こんな生活を一度はしてみたいと、
君なら言うんだろうね。