風は西から吹いてきた
風は東からも吹いてきた
俺は、北北西に吹き返した
太平洋周り豪華客船に
俺の夢をのっける時
積載量超過
喫水線が
波の起伏の昼と夜の
北斗七星あたりに沈んだ
煙草とジンとコーヒーと
水平線のかなたのナポレオンが
かすかに笑ったのだが
俺は見た
確かに見たと思う
山の頂の白いラインに
海に写った太陽が
さざなみたって語りかけるのを
フロントガラスの汚れ
ボンネットの反射光
東と西の風
街ははるか下界の
昨日の夢をむさぼり
入道雲の呼びかけに
まだ答えていない
そう気が付いて
ブレーキを踏んだ時
東と西の風は
南の風とすれ違い
俺は
それにため息をのっけた。
