凍てついた朝に水を撒くのはやめてくれ

凍てついた朝に水を撒くのはやめてくれ

見ろ,ハイヒールの女が

鋭利な踵でジグザグに刻んでいく

その後を追いかける男の哀れなこと

転んだ拍子にジグザグの氷が体中に突き刺さる

 

烏が,その様子を見て笑う

笑った拍子に口にくわえたフライドチキンを取り落とす

フライドチキンは,野良犬がくわえ

野良犬は,市役所の職員に捕らえられ

市役所の職員は,職務怠慢から,

青年虐待を見逃してしまい

それを,毎日漫画喫茶に入り浸っていたせいにもできず,

通りすがりのペットショップのオウムに八つ当たりする

 

オウムは,だから,悪口ばかりを覚えるだろう

そのために,買い取られること無く死んでいく

その死骸は,浜辺に捨てられ

トランペットの男が,葬送の曲を吹いてやる

それが,あまりに名演奏で,ライブハウスにデビューとなり

ライブハウスは,感動した聴衆で机も椅子も粉砕され,

開店休業状態

 

怒ったマスターが自棄酒で,へべれけになり,

私は,その横で,お前と飲んでて,

とりあえず,見知ったマスターなので,適当に相槌だけはうっておく

そうすると,お前は,私にも,そんな風に適当に相槌打ってるのねと

怒りだし,

私は,徹夜で,そうじゃないことを説明する

だが,本当は,適当に相槌打って,肉体的な快楽が欲しいだけなので

結局,そう言う事になり,

その間に,へべれけのマスターが道路に汚物を撒き散らし,

朝になって,私の真実を知ったお前は,怒って部屋を飛び出す

向かいの老婆が,水を撒いて,汚物を洗い流す

それが凍結する

お前のハイヒールの踵がジグザグに踏みしだく

後を追いかける私

ぶざまにすべり,ジグザグの氷が体中を突き刺す

野次馬の馬鹿笑いが黄色い太陽の中で響きわたる

で,私は叫ぶ

いっそ,この心臓を貫き通してくれぇ

馬鹿笑いがさらに広がる

その様子を,物陰からじっと見詰める八百屋の女将

見ろ,それが,新しい煩悩の起点となるんだ

次に水が撒かれる朝まで

自分知らずの,どうどう巡りの起点

 

 

だから,凍てついた朝に水を撒くのはやめてくれ

 

 

 

 

do_pi_can   ド・ピーカン  どぴーかん  さて、これから  詩  小説  エッセイ  メールマガジン