雪,散る夕べ
do_pi_can   ド・ピーカン  どぴーかん  さて、これから  詩  小説  エッセイ  メールマガジン

凍てついた大気の向こうに

太陽が姿を隠す,

その直前に

空が燃え上がる

ちろちろと

西の辺縁が万遍無く燃えている

激しさをひた隠した

女の黒髪の

その後姿のように

燃え上がる

 

燃えたそこから

白い雪が

やってくる

思い出を繰るように

小さな破片が

舞い落ち,消える

密かに募らせた想いの

欠片が

一時,街中を灰色に塗り替える

その中を

あなたに似た姿が急ぎ足で

遠ざかる

後姿が

灰色に溶けてゆく

 

春まだ遠い一日の終わりの

空洞の夕方の

街角に立って

このあたりでは珍しい

雪の舞い散るのに

あてどない心を冷やそうと思う

しかし,雪は

積もることも無く

道路をかすかに湿らせて

春待つ地中に

沁みていく

 

池に

背中を丸めた水鳥が

浮いている

背中を丸めて

ちらほら

街灯の灯り始めた

街を歩く

背中を丸めて

雪が,もう止んだことを知る

あなたに似た後姿を

思いながら歩く

 

白い息しか出ないから,

溜め息はつかずにいよう

春は,まだ

遠いから