鎮魂歌

だっていいじゃん、女一人たたかって生きて行くって

すっごいさみしいもんなんよ

男の数? 数えた事無い

いい事いっぱいあったよ、本当だよ

タクシーに乗ってディズニーランドまで行った事あったよ

もちろん、ここからだよ、あったりまえじゃん

その人が、タクシーチケットばしっと切って

近くのホテル取ってくれてて

フルコースのディナー食べたんよ

その人、ディナー食べながら言うんよ

「これ、トイレに行って、入れてこい」って

何? 言わせないでよ、恥ずかしい

恥ずかしいやら、気持ちいいやら、

その人がスイッチ入れるたびに

中でクネクネ動くんで、声出しそうになるし

あれは刺激的だったよ、本当

 

看護婦やってる時、

やくざの親分に気に入られて、

いろんなプレゼントもらったよ。

その親分、毎日 あたしの手を握るだけだった

あたし、その親分が退院する時に

屋上でやってあげたよ、口で

親分、感激して、お金いっぱいくれたんだよ

それで、海外旅行したんだよ

 

結婚もしたよ

一年くらい一緒に暮らしたよ

娘が一人生まれて

可愛いんだよ、これが

今、三歳だよ

離婚して、ずっとあたしが面倒見てたんだよ

でもね、悪いことしちゃった

あたし、あんまり可愛いもんで、ついつい手を出しちゃって

いつもアザだらけだった

煙草を押し付けたこともある

反省してます、本当に

心の底から愛してたんだよ

本当だよ

今?

父親の方に持ってかれちゃった

あっちは別の家庭持ってて

今ごろ継母に虐められてんじゃないかって

そんな風に考えると悲しいよぉ

 

あたし、実の両親には負けたくないんだ

あいつら、あたしをほっぽりだしたからね

あいつらより絶対幸せになって

見返してやるんだ

それが、あたしの夢

それ以上の事は、望まない

あんたが、いてくれたらいいけど、

そんな事、無理だよね

あたし、一人で生きて行くからいいけど

たまにつらくなったら

お酒くらい付き合ってね

お酒だけでいいんだから

 

 

       彼女の心に吹く風は壮絶で

       僕なんか、生半可なこんにゃくみたいだった

       壮絶な風は、一見可愛く見える彼女の

       そこここに

       様々な傷を残していて

       それらは、鉛の塊のように重かった

       その重さに耐え切れなかったのか、

       一年後に死んだと、

       風の噂に聞いた

 

 

 

 

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