「無重力の声」
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第二デッキと第三デッキの間で
地団太を踏まないでくださいと言う
乗船直後の注意を忘れていたわけではないのだが,
つい踏んでしまった。
それで,いきなり無重力空間に放り出されてしまった。
それにしても,
さっきから耳元を通り過ぎるこの声はなんだ?
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放り出される時,とっさに掴んだビニール袋が
僕の命を支える最後の糧。
何で,地団太なんか踏んでしまったんだろう。
そうだ,
大気圏を飛び出す,その瞬間に
君が,背の高い男と一緒に昼食を食べに出かけるのが見えちまったからだ。
つい,嫉妬の火がむらむらと。
で,地団太を踏むはめになったんだ。
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地上は夜だ。
高層ビル群のてっぺんに赤い信号灯がともっている。
あれは,目だ。
下から見る分には気が付かないが,
あれは,確かに生き物の目だ。
そうか,奴らも生き物なんだ。
昼間はビルに擬態するが,
夜になると本来の姿に戻る。
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これは,奴らの声だ。
僕の耳元を通過し,月へと向う。
月と地上との間に充満する,無数の奴らの声。
月に焦がれ,恋い慕う声。
だんだん,意識が薄れていく。
体が地上に向って加速する。
奴らの姿が近づいてくる。
あざけるように僕を見ている。
いいだろう。
僕も,声の一つになろう。
君を慕って,月に恋焦がれる
一つの声になろう。
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