「ある国の現実」

 



 

何故?

と聞かれると,困ってしまう。

逆に聞き返したい,

「何故?」

何故,あなた方は,戦わないのか。

自分の運命や人生に対して,

ギリギリの戦いを挑まないのか。

私達は,

戦わねば生きていけない。

身体に巻いたプラスチック爆弾が

生と性の証なのだ。

明日が見えない,

昨日は,苦しみの連続でしかない。

殺戮は罪である。

が,我々の明日を奪い取る者達を滅ぼし,

子供達のために,明日を用意する事は,

美徳である。

夫は,既にない。

奴らが殺戮した。

父も,母も,

奴らの手によって,のたうちながら

死んだ。

報復は,罪か?

このままでは,

子供達に指し示してやる

明日がない。

だから,

道を開いてやるのだ。

彼らの愛する者を奪った奴らの

血をもって。

子供達は,

この母の屍を乗り越えて,

きっと,明日を見つけてくれる。

そのために手段は選ばない。

選べない。

奴らの前に

身体だって開いてやる。

そして,

何十人もの奴らを

殺戮してやる。

それが,

母の務めだ。

子供達が

緑成す

実り多き国を

築いてくれるだろう。

季節の中で,

昔のように

人々の笑顔あふれる国を

創ってくれるだろう。

奴らが来る前に

確かに存在した

かつての我らの国。

 

子供達は

知っている

母が,

最後に

瞼に思い描く

子供達の未来の姿を。

 

そのために,

何故,戦わない?

 

 

 

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