叔父の葬儀にて

 

 

 

僧侶の読経が始まると,

幼い頃の思い出,

あなたやあなたの親族達との思い出が膨れ上がる。

そう,親戚一同が集まるのは,盆くらいで,

そうした思い出には,

僧侶の読経が必ず付きまとい,

あなたの語る滑稽な話や怪談話が付きまとう。

だからだ,

読経が始まると,いきなり涙が止まらなくなったのは。

それは,失われた事に気が付いて,

はじめて理解する一つのレクイエムみたいなものだ。

あなたの息子,つまり親戚の兄貴の顔も随分老け込んで,

僕には,昔,一緒に魚釣りした頃の面影しか記憶に無いものだから,

それは,向こうも同じで,

お互いに相手が誰なのか皆目検討がつかなかった。

漸く相手が誰なのかわかった瞬間,

あの,夏の日の記憶がどんどん蘇る。

扇風機すらも珍しかった時代

蚊取り線香の匂いの中,

蚊帳の小さな網目をたどりながら

親戚の子供皆で一つ蒲団に寝転んで,

一年分の話をした事など。

飲めないけれど,陽気な性格のあなたは,

酔っ払った人以上に賑やかに,

蚊帳の外で,団扇を使いながら

愉快な話や怖い話を始めたものだ。

そうして,あなたは,僕達の頭の中に

笑いと恐怖を植え込んだ。

そうだ,

あの頃の

山間の田舎の夜の暗闇は,本当に怖かった。

それが,

あなたの,やけに若々しい祭壇の写真の後ろから

湧き出てくる,

降るような星空とともに。

 

 

 

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