「8マイル」

 

 

 

エミネムの自伝映画「8マイル」が印象に残っている。

 

ストーリーは,ブラックの中で,唯一ホワイトラッパーだった彼が

才能を発揮して,ナンバーワン ブラックラッパーを

舞台の上でこてんぱんに凹ましてしまうと言う,

単純明快な音楽根性物語。

ストーリー性や,エミネムのラップ音楽の中身への

印象は少ないのだが,

次の3点が印象に強く,好きな映画の一つにしてくれた。

 

その1.

言葉を

チラシの余白に,小さい字で,汚い字で

バスの中で,トレーラーハウスの中で,様々な場所で紡いでいた事。

手前味噌だけど,

僕も昔,書店で付けてくれるブックカバーの裏に

文字を書き付け,空き缶に放り込んでいた。

何故,ブックカバーかって?

本を買うと必ずくれるし,

殴り書きするのに,調度いい大きさなんで,

カバンの中に,いつも何枚かのブックカバーを入れていたものだ。

で,すごく共感できる。

今は,メモ帳だけど。

そう言えば,唐十郎も,カレンダーの裏や余白を使って,

細かい字でチマチマと戯曲を書き付け,

喫茶店でバイトする李麗仙の所に通っては,

読ませていたんだと。

まだ,状況劇場を作って,不忍池でテント芝居を打つ前の話。

 

その2.

カバンの代わりにビニルのゴミ袋を使っていた事。

要するに,貧乏でカバンが買えなかったからだけど。

中身の無い財布と,免許証,わずかの着替えを入れて工場に向うには,

それで充分だろう。

ゴミ袋って,やたらと,ガサガサ音を立てる。

その音が貧乏臭くって,ハングリーな感じでいい。

僕も,プータロー時代には,似たような事してた。

リュックなんかにビニル袋をぶら下げて,

ガサガサ音を立てながら歩く人が好きだな。

タイの道端,屋台で食べ物を買うと,入れてくれるのも透明なビニル袋だな。

あれも,なかなか合理的で素晴らしいと思う。

 

その3.

母からもらった古い車を自分で直してしまうところ。

これは,僕には絶対に真似できない。

機械音痴で不器用なので,

直すどころか,二度と動かなくしてしまうのが落ちだろう。

車を自分で直して乗ってしまえる。

これは,すごい事ですよ。

 

映画の内容そのものは,たいした事無い。

でも,これらの点で,一時,熱くなれた。