「AI」
なんだ,こんな映画,まるで鉄腕アトムの焼き回しじゃないか
と,出だしで思った。
助からぬと言われた息子の代わりにと,
妻に与えたロボットの子供。
本当の息子は冷凍保存され,
代わりにロボットの子供に愛情が注がれる。
その欺瞞。
が,助からぬはずの息子に治療法が見つかり,
息子は,元気な姿で帰宅。
そうなると邪魔なのはロボットの息子。
今まで,実の息子のように愛情を注いだがために,
逆に,余計に邪魔になる。
ある日,ロボットの息子は,事件を起こし,山に捨てられる。
そこから,ロボット狩りに遭遇したり,人間になりたいばかりにフェアリーテイルを捜し求めたり。
涙ぐましいばかりの努力が始まる。
自分を捨てた母親に会いたいばかりに。
やがて,氷の海に閉じ込められ,そこから助け出されたのは実に数万年ぶり。
人類が死に絶え,人類の思い出だけを持って進化したロボットの世界となっている。
進化したロボットたちは,少年のロボットから貴重な人類の記録を取り出し,
そのお礼に,少年の頼みを聞いてあげると約束する。
少年は,「ママに会いたい」
進化した世界でも,人類は一日分の命しか再生できない。
少年の持っていた母の髪の毛から,あんなに会いたかった母が再生され,そして……
単純なロボットの愛情(?)の前では,見返りを求めぬはずの母親の愛情は,実は,生物であるが故の種の保存欲求に導かれており,それがために,いかに自分勝手で不純な感情であるかが,浮き彫りにされる。いわんや父親をや,である。父親の愛情など,添え物。
それも,しかり,事実だと思う。
少年は,まるで人間の子のように,母を求める。
が,それは,エクセルで作られた大きいシミュレーションシートと何ら変わらない,
プログラムのルーチンの一つでしかないのだ。
だからこそ,シンプルで,汚れを知らぬ赤子のようで,涙を誘う。
またもや,スピルバーグに,一本取られてしまった作品。
2003.11.21