「アメリ」
オープニングで,まばたきできなくなった。
幼いアメリが,赤い実を10本の指の先に突き刺して,
一つづつ食べていくシーン。
あれは,昔,やりましたね。
給食の時。
先生に怒られた記憶がある。
それだけに,そのシーンで,惹きつけられてしまった。
まぁ,今になっても行儀の悪さに喜びを感じる人間てわけですね。
ブリュレの少し硬い焦げ目をスプーンで割るシーンの方が,
圧倒的に支持率は高いと思うのですが,
残念ながら,私の幼少期には,ブリュレなんて贅沢な食べ物は無かった。
お米屋さんが届けてくれるプラッシーどまりですよ,贅沢品と言えば。
私の田舎では。
アメリが,重ねていく小さな悪戯。
他人を幸福にする悪戯で,それだけ聞けば,なんかおとぎ話チックなんですが,
実際は,アメリって,すごいストーカー。
幼い頃にお母さんと死に別れ,心臓が悪いからと,ほとんど外へは出してもらえず,
空想ばかりを相手にしていたのでは,そうなっても仕方ない。
徹底してねちっこく,あまり好きなキャラじゃないのですが,
描き方があっさりしているのと,主演のオドレイ・トトゥが,あまりにアメリの世界にはまっていて,
愛らしいからだろうな。
ついつい,最後まで惹きつけられて,アメリの恋の相手に,軽い嫉妬を覚えもした。
ほとんど外出せず,暗い生活をしている父親の庭から,小人の人形を盗み出し,
旅をさせ,行った先からポートレイトを送らせるアイデアは,最高。
そのおかげで,最初は怪訝な顔をしていた父親も,若さを取り戻していく。
なぜ,人形が旅をする事ができたのか。
それは,まだ見ていない方がおられたのでは面白くないでしょうから,書かずにおきます。
そんなアメリの好きになった少年も独特の趣味と生活形態を持っている。
アメリらしい恋と,アメリらしいジレンマの挙句の告白の仕方も,なかなかアメリらしくて良い。
アメリカ映画では,あんな世界は描けないだろうな。
アメリや,アメリを取り巻く人々なんかは,強きアメリカでは存在できない。
アーノルド・シュワルツネッガーやキアヌ・リーブスなんかとは,到底相容れない世界だ。
でも,アメリカでも,ヒーローのような人間よりも,アメリに出てくるような,少し歪んで日陰にいるような人間の方が,多いはずだ。
ジャン・ピエール・ジュネ監督は,この映画のために,地下鉄や通りのポスター一枚まで
張り替えたのだとか。
そういったこだわりの部分を発見していくのも楽しみな作品。
2003.11.19