「色の位置から石の作法へ OC89-18 孫雅由 作」
まず,わかろうとしない事だ。
どうせ,わからないのだから。
作者だって,わかってるの?
なーんか,楽しんでるだけじゃないの?
って,まずは,たかをくくって,見ると楽しめる。
そうでなければ,「わかんなーい」と,通り過ぎるのが落ちだ。
それでは,なんだか,もったいない。
所詮,色を塗りたくった一枚の大きな布がぶら下がっている前に,
手前に向って,沢山の石が,ランダムに色を付けられ,転がされているだけなんだから。
そう,ただそれだけ。
それに御託並べたって,仕方ないでしょ。
まずは,立ったり,座ったり,首を傾げたりして,
そのたびに見えの変わる,石の様子を楽しむ。
で,段々熱中してくると,(ここに多少のテクニックがいるのだが)
作者の気持ちになったつもりで,同じように,
立ったり,座ったり,首傾げたりして,眺める。
そうすると,
“この線から入らないでください”ラインが,
なんだか邪魔に思えてくるのだが,
そこは,ルールを守りましょう。
どうです?
なんだか少し,楽しくなってきません?
ただの石ころが,いとおしく感じてくるんですよ。
では,次のステップです。
次は,石の気持ちになって見てみる。
別に,本当に石にならなくってもいいんです。
石が,人間になった夢を見ていて,その人間が自分だと思えばいいんです。
そうすると,どうです,
石のブツブツが聞こえてくるでしょ?
ここで,国語の教師なら,
「こんな風に書かれてますけど,本当に石がブツブツ言うのを聞いたわけじゃあ,
ないんですよ。そのような気になるように,意識を集中していただけなんですから。
はい,ここ,チエックしてください。次の試験に出ますよー。」
でもね,本当に,石がブツブツ言うんです。
そんな風に置いてあるんです。
石の一つ一つが,
時間軸の“if”にくすぐられて,
ほれ,ほれ,ほれ,
そうすると,ほら,別にこの石がここでなくっても.....
ぶつぶつ,ぶつぶつ
全ての石の言葉に耳傾けてては,一日かけても足りません。
でも,聞かずには,いられない。
そう,こんな鑑賞の仕方は,やめましょう。
自と他の境界線が見えなくなってきます。
(兵庫県立近代美術館 常設展示場にて)