芦屋市民病院にて

ここは人の死ぬる場所である

さらに、人が生きようと努力する場所でもある

だが、人生の真ん中で足踏みする僕を

救い上げてくれる場所とは、とても思えない

鼻全体に広がった炎症の不快感に耐えられずに来たのだが

血液検査だの、レントゲンだのと

僕の人生のいらいらなど全く関係のない検査が続いている

胸の奥を掻き毟るジレンマが鼻の不快感とあいまって

診察室の使い古しのガーゼのような感触で心中に張り付いている

病院とは思えない風光がナースステーションから広がっていて

それだけが一縷の望みに繋がっているように思える

廊下に引かれた赤い線が

僕の曖昧さを笑っている

包み込むような医師の眼差しと

優しい看護婦の笑顔が

すべてに白黒つけられない僕を笑っている

CTスキャンがまわっている中で不覚にも寝入ってしまって

絣の着物と蛇の目傘で坂を登ってくる君の夢を見た

フィルムには、そんな僕の妄想も映り込んでいて

「きれいな人なんですがねぇ」と

医師が困った顔で診断するのだろうか

ところで君はどこへ行くつもりだったのかい

坂の上には、この病院と少し先に霊園しかない

君の愛しい人がそこに葬られているのかい

春先に椿咲き乱れる霊園に

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