「風吹きすさぶ夜」

 

 

風がビュウビュウ吹いているのだ

ちぎれた雲が

都市の灯りに照らし出されて

虚空の彼方に

消えていくのだ

何にもしがみつけない

何一つつかまる物もなく

苦し紛れに

舌打ちの一つも残すか

しかし、それは

一瞬にして消えてなくなるか

 

月も見えない

ただ

風がビュウビュウ吹きすさぶのだ

今夜は

せめてこの世に生きた証に

髪乱して叫びたい

愛した女の名や

愛したい女の名を

それも

古風に裾翻らせて

虚空の彼方に

消えてなくなるのだろう

あるいは

かつて旅したことのある

鄙びた温泉町や

質素な漁師町の

夜更けの信号機の明滅に浮かび上がる

電信柱の孤独に

しがみつくのだろうか

 

風がビュウビュウ吹きすさぶ夜の

人恋しさ故の

孤悲の想いの

do_pi_can   ド・ピーカン  どぴーかん  さて、これから  詩  小説  エッセイ  メールマガジン