「君は、ただ首をふる」

 

航跡に

海が輝いたと見えたのは

実は

君の心の光と影が

地球に反射したからのようだ

あるいは

夜中の深海のような酒場の片隅に

君が置き忘れた真珠の数粒だったかもしれない

激しい感情を波間に沈めたか

あれから平穏を装う君

一昨日まで吹き荒れていた空も

今は真摯に高さを増し

秋にまで手が届くか

人々は

さらに日常に埋没する

日焼けした肩を長袖で隠し

冬をどう耐えるかと

思いめぐらせ始める

北風が心を突き刺す前に

コートやジャンパーを用意する

そんな季節の事情に知らぬ振りして

ただ

波に漂う君

渇きが背中に張り付いている

牡蠣殻のように

僕が一枚一枚剥ぎ取ってあげようか

そうして

ジャンパーを用意してあげようか

君を波間から引きずり出して

笑って首をふる

ただ

笑って首をふる

 

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