今日の海からの風は

水平線に白くかかった雲の名残り

隣の雑木林が呼応する

拡大する昆虫の羽の振動に

ワーズワース的に反応したのか

日光が斜めにこの島国を切り裂く

 

犬がまた漏らしたと

光り射さぬ廊下の向こうで

女房がうごめく影となって

騒ぎ立てるなか、

 

君からのメールが

成層圏を経由して

音も無く到着し

無意味な言葉の羅列が始まる

 

そんな事の繰り返しとは

何の脈絡もなく

ここから見える

静かな都市の午後の向こう

海のはるか向こうに

広がる喧騒

立ち上るらしい煙

だが、叫びすら聞こえない

 

かつて

夢で泳いでいったあの街

蜃気楼の中

あと僅かでたどり着けた街だった

憧れの塊であったあの街を

憎しみが蹂躪しているらしい

 

多くの涙が

新たに多くの涙を

産みだそうとしている

やがて

金属の塊が

この空気を切り裂くのだろう

 

その音すらも聞こえぬか

あるいは

昆虫の羽音を一時止めるか

女房を犬から引き離すか

僕からのメールに辟易する君の目を

空に向けるか

 

海からの風は

白い雲の名残り

枯れたひまわりを揺らしている

頼りなげに最後の蝶を飛ばしている

水平線の向こうに

火柱が立つのは

こんな日だ

 

静かな午後

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