<社内報などのサンプル>
(1)はじめよう!心の元気作り (製造業 2009年)
(2)感情が変わる考え方 (製造業 2009年)
(3)心を健康にする生活習慣 (製造業 2009年)
(4)職場環境を円満にする会話力 (製造業 2009年)
(5)カウンセリングルームへの誘い (製造業 2010年)
(6)夏ばて対策のセルフコントロール (製造業 2011年)
(7)暑い日には熱いお茶(製造業 2013年)
(8)何度いったらわかるのよ 母と子の熱血ブログ (教育関係 2015年)
<はじめよう 心の元気作り>
はじめよう!心の元気作り
ストレスを知る
相談ケース
A社のBさんは、近頃課長に昇進しました。仕事が忙しくなり、そのせいか家庭内でもトラブルが起こりやすく胃が痛む毎日ですが、「ストレスに負けるほど自分は弱くない」と特に何もしていません。
ストレスは万病のもと
そもそもストレス反応の基本は、私たちが敵から身を守るためにおこる反応で、大昔、獣などの敵に対する時は、活動を司る交感神経が活発となって血圧を上げ、心臓は高鳴り、戦いモードになりました。敵が去れば逆の副交感神経が働き、リラックスできます。
しかし現代社会のように、いつまでも敵(様々な課題)によって緊張状態が続くと、力が抜けず、集中力や決断力が鈍り、さらには胃潰瘍、高血圧、糖尿病などの生活習慣病やうつ病にかかりやすくなります。やがて、ホルモンの影響で体全体が衰え、死に至ることもあるのです。全疾患の8割がストレスと関係しているといわれ、たかがストレスと侮れません。
心と体の声を素直に聞く
Bさんのような頑張り屋さん達の中には、自分のストレス状態を認めない方や無頓着な方がいますが、胃が痛い、肩がこるなどの症状は、体からのメッセージで、なんらかの対策を打ってほしいと訴えているのです。
人前で話すとドキドキする、嫌な事を言われてイライラするなどのマイナス感情は心の声。自分の気持ちを教えて危険や注意を察知し、より良く生活するために発するのです。人類の発達はこのマイナス感情のおかげです。これからはストレスという言葉の捉え方を変えて、自分の気持ちを教えてくれているのだと、むしろ感謝して耳を傾けましょう。
ダブルストレスを避ける
家庭のストレスが大きい時は職場のストレスを、職場のストレスが大きい時は家庭のストレスを減らす事を考えましょう。プライベートと職場は分けるのが基本ですが、仕事に影響が出そうな時は人に相談するのもひとつです。しかしまず、Aさんのように仕事が忙しいからと、家庭を疎かにしない事。どんなに忙しくても最低、感謝の気持ちや挨拶はする、なるべく一緒に食事をする、それも出来ない時はメールやメモを書いて、常日頃からコミュニケーションを図りましょう。
ストレスにはまた、昇進、結婚、引っ越しなど環境が変わることに伴う大きなストレスと、日常的なちょっとしたストレスがあります。大きなストレスは人生で避けて通れないものですが、机の上が汚い、お礼の手紙を出さねばといった頭の端で気になる小さなストレスを解消するのは自分次第です。日常と家庭のストレスは、マメに動いて重ならないように解消すると、大きなストレスへの余裕が生まれます。
適度なストレスが能力を高める
下手をすれば病気へとつながるストレスだから、目標なんてどうでもいいと全ての課題から逃げ回ればどうなるでしょう? 獲物を前に逃げ回わればいつまでたっても弱いままで、いつか獣にやられてしまいます。人は小さなストレスを少しずつ乗り越えて能力を高め成長していくのです。確かに大きすぎる課題は問題ですが、適度なストレスはプラスになります。ストレスを上手く操って、本当の意味でストレスに打ち勝つことをBさんにはおすすめします。
別表は自分の状態を知るものさしです。時々チェックして、状態が下がっている時は早めに寝るなどリラックスを心がけてください。
笑顔
笑顔には、ストレスホルモンの分泌を抑えて免疫力を高める力があります。笑顔を作るだけでその効果があるとか。一人一人の体の中に、最良の薬局があるということです。笑顔になりましょう!音楽を聴く、ペットを飼う、花を育てる、歌を歌うのもおすすめです。幸せを感じるために、嬉しかった事や感動した事を日記に取り入れるのもいいですね。
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<感情が変わる考え方>
ストレスを前向きに受け止める考え方
相談ケース
B子さんは、先日ちょっとしたミスで上司に注意されました。家に帰ってからも、「何をやっても失敗ばかり」「将来が思いやられる」「私は何も出来ない」などの考えが浮かび、落ち込んでいます。
<考え方がストレスを生む>
皆さんは、「『失敗した』という出来事」に「『落ち込む』という気持ち」が、案外違和感なく結びついてしまうと考えがちではないですか?でも、実はそうではないんですよ。
例えば、「たまにはミスもある」「失敗も経験のうち」と考えられれば、「失敗=落ち込み」とはなりにくいのです。
B子さんのように、悪い事の原因は自分にあり、(個人)、その状態は将来まで続き(永続的)、何も出来ない(普遍的)という考え方をしてしまうと、同じ状況にあっても、「失敗=落ち込み」となり、強いストレス感情を生んでしまいます。
<解決策に焦点を当てる>
例えば「忙しい」時、そのストレス感情にばかり焦点を当てていると、イライラして、忙しい仕事を依頼してきた相手や効率よく処理できない自分を責めるでしょう。そして不快な状況を作った「原因(=敵)」に対する感情は怒りや恐怖に近くなり、攻撃行動や逃避行動をおこします。
ところが、「忙しい」を、「ゆとりを手に入れる」と言い換えて解決策を考えれば、それは「敵」ではなく手に入れたい「獲物」となり、それを手に入れる工夫は喜びや楽しみにもなります。
このように解決策に焦点を当てると、脳の中では報酬系のドーパミンが生じ、「やる気」を生み出すと言われています。
B子さんは、自分を責めるより、ミスを減らす工夫をしてみるといいですね。
極端な思考をやめる
人はストレスを受けた時、物事を極端に考えてしまう傾向があります。白か黒か。中間のグレーがありません。それは、原始時代、戦うか逃げるかを即座に決断し、緊急事態に対処するには有効でしたが、現代では、逆にストレスを高めます。
まさにB子さんです。根拠のない極端な考えが浮かんできたら、違う方向から自分で反論してみましょう。
失敗は、周囲の状況も関係していたかもしれないし(状況)、将来まで続くわけではなく(一時的)、何も出来ないわけでもない(特定的)。
考え方の癖に気づいて少し見る角度を変えると、ストレス感情は変わるのです。どの考え方をとるかは自由。自分次第で幸せは生まれます。
<コラム¨身体を温めましょう>
体温が35度台になると、栄養素や老廃物の処理が上手くいかず、自律神経や排泄機能の低下を招きます。頭がぼっーとする、体がだるいなどスッキリしない症状はありませんか? 近頃やる気が起こらないのは、案外冷えが原因かもしれません。暖かい季節でも腰やお腹が冷えていたら、カイロを使ったり、体を温める生姜を摂ったり、半身浴をしたりして血流を促しましょう。
<心を健康にする生活習慣>
心を健康にする生活習慣
ストレスを受けると、自分を癒すために往々にして不健康で、簡単な方法に走り、さらに慢性的なストレス状態に陥ります。健康的なライフスタイルを身につけることが、心の健康への近道なのです。
あるケース
Cさんは、会社で嫌な事があるとストレスをためないようにと、たびたび友人と飲み明かします。その場は楽しいのですが、寝不足で体が重く、すっきりしない毎日です。
対処方法がストレスの分かれ道
ストレスに対処する方法には、原因を調べて解決する、人に相談する、気分転換する、視点を変えてみるなどがありますが、これらを状況に応じて積極的に使い分けます。
プレッシャーを受けたスポーツ選手が、積極的に問題解決を図って対処した場合、それは快ストレスとなり、大きな成長が期待できますが、喫煙や過度の飲酒で対処すると、不快ストレスに変わり、能力が低下する恐れもあります。対処方法の違いが、人生の大きな「分かれ道」にもなるのです。
よりよい眠りが心の活力を生む
人の体の中には、休息と活動のリズムがあり、これを体内時計と言います。睡眠は脳にとって一番の休息ですが、Cさんのように不規則な生活を送るとリズムが狂い、心の健康の悪循環を生みます。
朝起きて太陽の光を浴びる事で、体内時計はセットされます。例えば、午前7時に目覚め、8時に体内時計が朝を感じたら、午後11時にはメラトニンが分泌され、深部の体温、脈拍、血圧を徐々に下げます。その作用で午前0時頃には健やかな眠りが訪れ、7時間後にはすっきり目が覚めるのです。
食事の質が脳の健康を左右する
脳の重さは体重の2〜3%ですが、エネルギー消費量は全体の20%にもあたり、食生活が貧弱だと脳も栄養失調になります。
脳のエネルギー源はご飯や糖分から摂るブドウ糖。でもこれだけではうまく働きません。脳内の神経伝達物質のもとになるのは、肉や豆類などのたんぱく質、心の安定にはレバーやバナナなどのビタミンB群、脳内の血流改善には青魚などのDHAやEPA、イライラを改善するには牛乳や小魚などのカルシウムも必要です。
脳の健康には、バランスの良い食事が欠かせません。調子がすぐれない時は、食生活をチェックすることも重要なポイントです。
自分なりの楽しい時間を見つける
ストレスをためずに暮らすには、読書や友達とのおしゃべりなど、日常生活ですぐに楽しめる事をひとつでも多く持つことです。また、旅行など非日常の時間を自分へのご褒美として用意する事。
ほんの一瞬の喜びや感動でも、心の緊張はずいぶんほぐれます。
ワンポイントアドバイス
香り
嗅覚は、記憶や感情に関わる中枢神経系に直結している情緒的な感覚です。そのため好きな香りをかぐと良いホルモンがたくさん分泌され、心が癒されます。
アロマテラピーでは、香りの精神的な働きかけプラス精油の薬理効果も期待できます。因みにラベンダーの香りは心穏やかに、オレンジの香りは気分を明るくし、ローズは緊張をほぐします。
<職場を円満にする会話力>
職場環境を円満にする会話力
職場で最もストレスの原因になるのは人間関係です。その人間関係を円滑にするのは会話力。ちょっとしたコツを実践するだけで、居心地良い職場へ様変わりです。早速できることから始めてみましょう。
あるケース
半年前に部長に昇進したDさんは、非常に仕事熱心で、てきぱき部下に仕事を割り振り頑張ってきました。しかし結果は逆で、部下の士気は下がり、業績も低迷。人間関係もぎくしゃくしています。
上手な仕事の頼み方
Dさんのように張り切り過ぎると、部下の気持ちや状況を考えない一方的な指示を与えがちです。
上手な仕事の頼み方は、メールや電話ではなくなるべく直接会って話します。そして、事前に考えた別記の表の事をすべて伝え、相手の意向を確認し、納得して仕事を請けてもらいます。
依頼後も「やらせっぱなし」ではなく、状況を確認してフィードバックし、必要に応じてサポートもします。この際、「うるさくならない程度」という事を忘れてはなりません。
仕事が仕上がったら、お礼を言い、努力をねぎらいましょう。そしてなるべく早く、良い点を具体的に伝え、相手の満足感を高めます。
少々面倒でも上手に依頼すれば部下のやる気を引き出し、自身の能率アップと組織の活性化にもつながります。
会話に誤解はつきもの
いくら説明しても理解してもらえない、という事はよくあります。
例えば、話し手が「考えた事」と相手に「話している事」は100%同じでしょうか。また、「話している事」を相手が100%理解できるでしょうか。難しいでしょう。会話には誤解があって当然なのです。
ではどうすればいいのか。それには、極力誤解を避ける努力しかありません。話し手は、自分の使う言葉が分かりやすいか今一度チェックし、丁寧な説明を心がける。聞き手は、必ず確認する事です。「10時に会議室で」と言われたら、「10時に会議室ですね。用意するものはありますか」などと補足しながら確認しましょう。
会話に誤解はつきものと思えば苛々も収まり、対処のしようもあるという訳です。
苦手な人にこそ爽やかな挨拶を
人間関係の悩みを持つ人の多くは、全ての人とうまくやっていきたいという気持ちが強いようですが、苦手な人を無理に好きになる必要はありません。本心とは関係なく、できるだけ気持ちよく会話するのが職場だと割り切れば心も楽になり、かえって会話も弾みます。
「メラビアンの法則」では、相手の印象は口調やしぐさなどの見た目で90%決まると言います。と言う事は、少々嫌な相手でも明るく爽やかな挨拶を交わすことで、関係が好転する可能性もあるのです。
また、会話には「情緒的」と「合理的」なものがあります。ビジネスの場では、合理的な会話がないと先に進みませんが、時には情緒的な会話も交えると、より強固な人間関係築くことができます。ただ、相手が今どちらを求めているかを汲み取ることが大切です。
ワンポイントアドバイス
呼吸
セロトニンは「幸福ホルモン」とも呼ばれ、ストレスを跳ね返し、精神を安定させてくれます。仕事で緊張が続くと交感神経が優位となり脈拍や血圧が上がりやすいので、意識してセロトニンを増やします。
深い呼吸をすると血液中の二酸化炭素が増え、結果として脳内のセロトニンが増えることが分かってきました。
横隔膜の上げ下げを意識して、腹式呼吸をしてみましょう。吸うのに10秒位、吐くのにその倍以上。これを20回ほど繰り返します。
心が落ち着き、プレゼンの前にも効果がありそうです。
<カウンセリングルームへの誘い>
カウンセリングルームへの誘い
12年間連続で自殺者数が三万人を超え、自殺までいかなくとも「心」の不調で休職したり仕事を辞めなければならない人が増えたりして、政府もようやく重たい腰を上げ、「心」の問題に正面向き合おうとしています。
「心」の問題はそれほどまでに深刻な事なのでしょうか?比較対象が悪いですが、先に流行した新型インフルエンザほどに?
「心」の問題は症状が見えにくく、原因も症状も人それぞれで突き止めにくいのは事実です。しかし、自分自身をはじめ、他人を大事にしようとする意思、仏教で言う「自利利他」の心を多くの人が持つことができれば、そこまで深刻にならない事の方が多いようです。医療は勿論大事ですが、それ以前に「人の心」が大事だと言う事ですね。
では、「心」を守る幾つかのポイントについてご説明しましょう。
<まず、知ろう>
大事なのは、心についてできるだけ知ることです。「心」は形がありませんので、明確な事は何一つ分かりませんが、昔から多くの学者が「心」について調査したり、実験したり、様々な取り組みをしています。最近は、テレビでもよく取り上げられているので、そういった機会を見つけ、「心」について知っていただきたいものです。ただ、いまだに迷信のような知識が横行しているのも事実です。何が正しくて何が間違いかではなく、自分に何が必要で、それは誰かに押し付けるものではない、何故なら「心」は色々な形で個々人の中に存在するから。そのように考えて知識を身につけてください。
<気づこう>
次に大事なのは、自分自身の普段の状態、さらには身近な人の普段の状態を良く見ておいて、普通でない状態にいち早く気づくという事です。例えば、いつもより寝覚めが悪いとか、朝の顔に元気が無いとか、食事量が少ないとか、口数が少ないとかです。自分自身の事ならば、身体のどこかの痛みが続いているとか、より詳しく分かると思います。
疲労やストレスで「心」のエネルギーが少なくなってくると、必ずどこかに症状が出てきます。忘れっぽくなったなどもそうですね。そういう状態に気づいたら、できるだけいたわる事。身近の人ならば、それとなく声をかけてあげ、不調の前兆に気づかせてあげる。自分自身の事ならば、暫く仕事の手を止めることも大事です。急がば回れとは良く言ったもので、ここで無理をしてしまうと、後で会社や沢山の人に迷惑をかけてしまいます。ちょっと難しいかもしれませんが、自分はどこまで頑張れて、どの線を越えたら一休みしなければならないかを知っておくのがいいのです。
<ぼやこう>
男性はプライドが高いのでなかなか弱音を吐きません。で、暴風の中の大木のようにいきなり「心」の問題でポキリと折れてしまうのですね。女性は柳のように振舞える人が多いので、男性に比べると「心」の問題には強いはずなのですが、最近は頑張り屋さんが増えて、多くの方が「心」の問題を抱えておられます。大事なのは、しんどい時、素直にしんどいとぼやくことです。ぼやくためには、自分のプライドを捨てられる相手、ぼやける相手を持っている事です。また、身近な人のために、自分がぼやける相手になってあげる事ですね。ぼやける相手とは、説教をしない、自分の経験や知識を押し付けない、自分とは違う考えも一旦は広く受け入れられる、そういう相手です。随分難しく感じますが、実は、毎日軽く瞑想することで、そういう態度を手に入れられます。そういう態度は、自分自身にも有効なんですよ。試してみてください。
どうしてもぼやける相手が見つからない時は、遠慮なくカウンセリングルームにいらしてください。
<身体を動かそう>
最後に、私からの提案として、毎日身体を動かしましょう。仕事で毎日身体を動かしている?そういう緊張状態での運動ではなく、のんびりと、できれば何も考えずに運動する時間帯を、毎日30分は持っていただきたいのです。運動と言っても筋力を鍛える激しいものではなく、心臓のリズムに合わせてゆっくり歩くと言った類のものです。通勤時間をそれにあてるのならば、せめてその間は仕事の事は忘れましょう。最も気楽な自分であっていただきたいのです。今、ここに存在する自分だけに集中していただきたいのです。前項に記述した瞑想が、実はその一環の行動です。作法にのっとってしっかりと瞑想するのもいいのですが、作法を無視し自分だけの方法で自分に集中することは、慌しく社会生活をしている我々にとってはより有効な手段です。一日30分程度、一案快い状態で快く身体を動かしてください。そういうセロトニンという神経伝達物質が最も良く機能している状態が、実は最も成果を出せる状態でもあるのだそうです。
さて、以上四つ、簡単に御案内しましたが、どうしてもうまくいかない、それでもやっぱりしんどいものはしんどいと言う事でしたら、ぜひカウンセリングルームにいらしてください。かならずお役に立ちますとはよう申しませんが、たぶん、お役に立てるはずです。
待ってます。
<夏ばて対策のセルフコントロール>
「夏バテ対策のセルフコントロール」
梅雨が明け、夏本番。つらい夏バテの季節でもあります。夏バテにより体調が狂うと、イライラ感が募り、職場や家庭での労働意欲の低下や注意力散漫の引き金となります。最悪の場合、事故にも結びつきかねませんね。
この夏をしっかり乗り切るために、まず、夏バテ対策から始めましょう。夏バテは、暑さや強い陽射し等の環境ストレスによる体調の乱れに、睡眠不足や体の冷やし過ぎ等が原因で起こる自律神経の不調が追い討ちをかけることで起こります。
暑さ等の環境ストレスについては、なかなかコントロールが難しいですね。ですが、自分の生活をコントロールすることで、体の調整能力を取り戻し、環境ストレスをも克服できる方法があります。基本的なところを幾つかご紹介しますので、一度お試しください。
まず基本は、体を冷やさないことです。体を冷やし過ぎると自己調整能力が狂います。クーラーを控えめにし、冷たい物より温かい物を飲み、体を温める食物(生姜や、かぼちゃ・にんじん・ごぼう等の根菜類)を積極的に摂り、体の自己調整能力を取り戻しましょう。
次に規則正しい生活を取り戻すことですが、大事なのは、「適度な運動」と「発汗」と「癒し」。早朝や夜間、涼しい時間帯に、軽く散歩をしてみませんか。少し早足で、汗ばむ程度に二十分ばかり歩くと、爽快な疲労感を味わえます。その後、コップ一杯程度の水分を補給し、ぬるめのお湯でゆっくりと半身浴を楽しんでください。睡眠促進や体をリラックスさせるラベンダー精油三滴とネロリ精油二滴入れると、より効果的です。自分へのご褒美として、体のコリをほぐしながら、ゆっくり、まったりとくつろぎましょう。同時に疲労回復のツボ、「湧泉」を刺激します。湧泉は、足裏の土踏まずよりやや指より、足指を曲げた時にできるくぼみの中にあります。ここを親指の腹で痛くなる程度に押し続けます。
最後に睡眠です。部屋を真っ暗にし、無理に眠ろうとせず、体をゆったりと横たえてください。しばらくは、息をゆっくりと鼻から吸い、口から吐きます。鼻腔の奥に空気があたる様を静かに感じてください。そして、「自分は今、とてもくつろいでいる」と、頭の中で何度も繰り返してください。無理に眠ろうとせず、体が重くなってきたとか、お腹が温かくなってきたとか、あるがままを受け入れてください。目を閉じているだけでも疲労は回復します。
朝起きた時は、真っ先にカーテンを開けて、太陽の光を取り入れましょう。朝日が、狂った体のリズムをリセットしてくれます。
以上が、夏バテ対策の基本ですが、夏バテに限らず、一年を通してのストレス対策の基本でもあります。今日から、どれか一つでも実行していただいて損はないと思いますよ。
それでも不調が治らない時は、医務室までご相談ください。
<暑い日には熱いお茶>
「暑い日には熱いお茶」
祖父は、暑い日に畑仕事から帰ってくると、熱い一杯の番茶を飲み干して、「ああ、やっぱり暑い日には熱い茶が一番」とよく言ってました。
年寄りくさい事を言うと心の中で思いながら、私は、井戸で冷やした麦茶をごくごくと飲み干していたものです。
その祖父の年齢に近づいた昨今、ちょっと違う景色が見えてきました。
祖父は、わざわざそう言うことで自分をそのように思い込ませ、熱いお茶を飲むことでお腹の調子を守っていたのではないでしょうか。
で、私もたまに真似をして、暑い日ほど熱いコーヒーを飲むようにし、「暑い日には熱いコーヒーですよ」とわざと言葉にします。
そうすると、あら不思議、またまた別の景色が見えてきました。
本当に暑い日の熱いコーヒーが美味しいと心から感じられるようになってきたのです。
人間とは便利なものです。
何が便利かというと、「言葉」を持っていると言う事です。
マーティン・セリグマンというアメリカの心理学者は、人間は互いの「言葉」に影響されて、本来出せる成果よりも、はるかに高い成果を集団で出すことができるようだと言っています。
本当は弱いはずの野球チームが、思いがけずにリーグ優勝したりする時に、そのチームの中での言葉の発し方が違っており、そのおかげでチーム全体のモチベーションが上がって、チームを優勝に導いているようだという報告をしています。
個人も同じようです。例えば「暑い日には熱いお茶」のように、はたまた、「きれいに片付けると本当に気持ちが良いね」とか、「良い仲間に囲まれて幸せだ」とか、「私ってステキ」とか、自分で自分に言葉をかけ続けてみると、本当にその状態が自分の中に定着するようです。
まぁ、騙されたと思って試してみましょう。
ああ、そういえば昔の人は雨の日を「良いおしめり」と言ってました。暑い日のことも「良いお日照り」と言っていましたね。「良い」と言葉を加えてみることで、気持ちが変わればめっけものです。ぜひ試してみてください。
「心と身体のコントロール」
「心身一如」とは禅宗の言葉で、心と身体は常に一体であるという意味です。
「心ってなかなか上手にコントロールできないよね」と思われることってありませんか?
わかってはいるのだけれど、ついきつい言葉を投げかけてしまう。
わかってはいるのだけれど、ついマイナスに物事を考えてしまう。
たしかに「心」は目に見えないものですから、なかなか変えられません。
最近わかってきたことは、ちょっとした「行動」が「心」に作用するようだという事です。
禅宗の「心身一如」の神髄は、そこにあるようです。
普段、何げなく行っている事を、ちょっと意識して行ってみると、それが「心」に影響を与えるようです。
普段、何げなく行っている行動の代表は「歩く」「呼吸する」「食べる」「しゃべる」「書く」などです。
「言葉」も心理学では「言語行動」と言い、「行動」の一つなんですよ。
キーワードは「意識して」「しっかりと」「ゆっくりと」です。
なんだか落ち込んだ気持ちの時、「意識して」「しっかりと」「ゆっくりと」足を少し上げ気味にして歩いてみてください。
なんだか不安な気持ちの時、「意識して」「しっかりと」「ゆっくりと」ため息をついてみる。それでもダメなら「意識して」「しっかりと」「ゆっくりと」深い呼吸を何度も行う。深い呼吸はいらいらした時、緊張した時にも効き目あります。
落ち着きを取り戻したい時は、「意識して」「しっかりと」「ゆっくりと」文字を書いてみることです。写経は大変効果あります。
長い会議で、身も心もヘトヘトになった時は「意識して」「しっかりと」「ゆっくりと」食事を味わうのが良いのです。
食事は、脳に一番近いところで五感を働かせて行う行為の一つです。
動物は、ヘトヘトに疲れたり、激しいストレスに見舞われた時に、五感を働かせなくなる傾向にあるんだそうです。
これを、あえて五感を働かせながら食事をとる事で、脳が被っている疲れやストレスを緩和させるのですね。
薄味の食物を、ゆっくりと時間をかけて味わいながら食べるのが良いのです。
そう言えば、「急がば回れ」という言葉がありましたね。急いでいる時には、その場でクルクル回れという意味ではなく、そういう時ほど「意識して」遠回りをして気持ちを落ち着けた方が失敗が少ないですよと言う意味ですね。
昔の人は良い事言います。
では、「意識して」「しっかりと」「ゆっくりと」、この残暑を乗り切りましょう。
<何度いったらわかるのよ>
「何度言ったらわかるのよ」
「何度言ったらわかるの?」「どうして言った通りにできないの?」
おやおや、街中で耳を澄ませば、どこからでも聞こえてきそうなお母さんの小言ですね。
かく言う私も、幼い頃に母からさんざんそう言われて育ちました。
たしか妻も口癖のように子供達に言っていたような。
ためしに「まぁまぁ、そうガミガミ言わずに」ととりなしてみましょうか、
「だって、できないこの子が悪いのよ」と反撃されそうですね。
片付けの苦手な私には、妻がそう言いそうです。ああ、耳が痛い。
別に、できない私をあげつらっての話ではないのですが、世の中全般に“親はそのように言うもの”、“子供はそのように言われるもの”と言う固定概念が発生してしまっているような気がしますね。
人間は、子供の頃に聞かされた言葉遣いや体験などから、大人になってからの言葉遣いや行動パターンを決定しがちです。
例えば、会社の中でパワーハラスメントしてしまう人の多くは、スパルタな環境で育った人が多いようですし、DV事件を起こしがちな人のほとんどは、親からDVを受けたり、親のDVの現場を見て育った人なのだそうです。DVを受けてしまう人も同様の環境で育った人が多いという報告があります。
人間だけでなくほとんどの動物は、生き延びるために色々な事を記憶し、その記憶に基づいてその場の行動を選択します。
例えば、仲間が危険な目にあった場所には絶対に近づこうとしないですし、良く似た場所にすら危険を感じて近づきません。
「君子危うきに近寄らず」と言いますが、それは生きとし生ける物全てにあてはまる教訓なのでしょう。
人間が、言葉を基本とした知恵を獲得していく中でもその習性は残り続け、経験した事、見聞きした事を中心に言動パターンを構築していきます。
「何度言ったらわかるの?」「どうしてできないの?」は、古今東西あらゆる場所で発せられた言葉なのでしょう、実に沢山の方々の記憶の中に組み込まれているがために、現代社会でも様々な場所で繰り返されているのですね。
だから「そんな言い方をするのは良くないですよ」と言う気はさらさらありません。
が、せっかくなのでこの機会にちょっと言葉の中身などを分析してみましょう。
まず「何度言ったらわかるの?」
何度同じ注意をしたって子供は言う事を聞いてくれない。
何処に対しても何の影響も無い行為ならば目くじら立てて怒らないのですが、部屋を散らかす、衣服を汚す、勉強しない、ゲームばかりしているなど、他人事では済まされない事に対しては、さすがに“いらっ”とさせられます。
実は、この“いらっ”が曲者なのです。
“いらっ”とすると人間の身体は一気に“闘争or逃走”モードに変化するそうです。
“目の前に自分に害をなす敵が現れた”という状態です。
「いえいえ、たかが子供に“いらっ”としているだけですよ」
残念ながら、人間がそうして外敵から自分を生き延びさせてきた何百万年という期間は、あなたが子供に接触してきた期間よりもはるかに長いのです。
自分の周囲に発生する事象に対処する方法は、この“闘争or逃走”しかないのです。
そうでなければ“食う、寝る、遊ぶ”となり、対処能力喪失状態です。
“闘争or逃走”モードでは複雑な判断能力などは不要です。
手足や体躯(骨格筋)に対する大量のエネルギー供給だけが要求されます。
脳へのエネルギー供給は大幅にカットされます。記憶の中からその場に適したと思わしき言動を想起して、深く考えずにそれを繰り返してしまいます。それが、環境の変化によって既に最適な言動でなくなっていたとしてもです。
だから、子供のよからぬ言動に“いらっ”としたあなたは、過去から連綿と繰り返されてきた「何度言ったらわかるのよ」という言葉を、「子供がわかるように話してきたかな?」とか「一番効果的な話し方って?」とか考えめぐらせる事無く発してしまうわけです。
ところで、人間って何でしょう?
おや、いきなり哲学的な話になったぞ?
いえ、もっとシンプルに考えましょう。人間って、集団で命を守ろうとしますが、実は、一人の人間も細胞の集団なのですよね。
一個の細胞が、自分達を外部環境の変化から守るために、集まり、進化し、一個の人間になったのです。
あなたの“いらっ”とした言葉や表情に対して、子供は身の危険を感じて対抗行動をとります。“闘争or逃走”モードです。
子供が親に対してそんな事ありえない?
いえ、子供だって細胞の集団として自己を守らねばなりません。で、“闘争or逃走”モードとなり、複雑な判断能力を喪失し、あなたが言った内容も子供の理解能力まで到達せずに、あなたの恐ろしい表情と共に子供の記憶の中に保管され、それには「怖い経験」と言うレッテルが貼られるわけです。
「何を、どのようにしないといけないのだろうか」とか「そのためには、まず何をしようか」などという冷静な判断は、「怖い経験」というレッテルの前では全く機能しません。無力です。
そして「何度言ったらわかるのよ」の背景にある「ちゃんと掃除してね」や「勉強を先に済まそうね」などという本来伝えたいメッセージまでもが、子供が理解できる以前にむなしく消え去るわけです。
これじゃあ、「何度言ってもわからない」はずですね。
それでは、どのように言えば子供に伝わるのでしょうか?
少なくとも“いらっ”とした感情、つまりあなたの“闘争or逃走”モードが消えるまでは何も言わない事です。子供を“闘争or逃走”モードに無駄に追い込まないために。
子供が冷静に話を聞ける雰囲気を作り出したほうが良いに決まっています。
そして、おかあさんが認める子供の長所をまず語ってあげて、子供の心の中に自信と冷静さを作り上げさせた後に、指示命令ではなく選択肢を与えるのが良いのではないでしょうか。
「散らかっていて、おもちゃがどこにあるのかわからない部屋と、片付いていて、すぐに色々なものが取り出せる部屋とどっちがいい?」等と言う様に。
まぁ、騙されたと思って試してみてください。
そして、子供があなたにとっても望ましい選択をした時には、まぁ、例えそうでなくとも、子供が自ら選択をしたと言う事に対して承認し、その事を具体的に褒めてあげ、達成感を感じさせてあげてください。
きっと、今以上に良い事が起こりますよ。
ドン・クリフトン博士が50年位前に、全世界を対象に行った調査報告書の中で、その事を報告していますから、期待して良いと思いますよ。
さて次回は、「どうして言ったとおりにできないの?」について考えてみましょうか。
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