ねぇ、風の丘のあの公園に
君の心は、まだ息づいているだろうか
あの夜も
お月様の光が僕らのまわりで飛び跳ねて
まるで小さな妖精達が
思い思いに遊具で遊んでいるみたいだった
あの虹色のベンチ
あのベンチで君は、よく絵を書いたよね
その横で僕は、大好きな歴史の本を広げて
居眠りをしては、君に笑われた
お弁当を広げて
輝く海を二人で飽きずに見てたっけ
君の手からこぼれたおにぎりが
海まで転がり落ちて
今ごろ魚達が喜んでるねと
二人で笑い転げたもんだよね
あの海で魚釣りもした
一匹も釣れなくって
でも、君は釣れない方がよかったって
つまらなそうな僕を尻目に
一人ではしゃいでたっけね
忘れられないよ
あの月の夜、あの公園で
必ず帰って来てねって
君は、しっかり僕の手を握り締めて
いっぱい涙を流してた
ねぇ、僕の心は、いつもあそこに飛んで行くんだ
このところ、つらい事ばかりが続いているけど
心だけでも、あそこに帰って行くと幸せになれる
そこに、君の心も息づいてると信じているよ
ねぇ、僕は君に告白しよう
実は昨日初めて人を殺したんだ
相手は、僕と同じ年恰好だった
森の中で出くわして
こんな時じゃなかったら
「やぁ、こんにちは」って挨拶するのに
お互いに何も言わずに後ずさりして
銃を向け合った
たまたま、彼のが外れて、僕のが当たっただけなんだ
彼の体が崩れ落ちた時
とっても悲しかった
ねぇ、もう一つ告白していいかい
でも、泣き出さないでおくれよ
その後、
僕は、見知らぬ誰かに撃たれたんだ
僕が撃った彼の事を考えている時に
弾は心臓の横で止まってるって
軍医の言葉が微かに聞こえた
もう、駄目だろうって
でも、僕は生きていたい
生きて、あの丘に戻りたい
月の光が飛び跳ねるあの丘に
輝く海の見えるあの丘に
君と僕の心が息づいているあの公園に
君は、虹色のベンチに座って
僕の事を待っててくれるよね
血で汚れちまったこの僕でも
描きかけのスケッチブックを置いて
手を広げて
笑顔で迎えてくれるよね
おかえりって
つらかったでしょって
だから僕は必ず帰るよ
荒れ果てた祖国の
たった一つの憩いの場所に
あの丘に
あの公園に
君の元に
君の....
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