この場所に
あなたは毎日やって来て
じっと佇む
たまに花を抱えて
立っている事もありますね
この花は
あの子が好きだった花です
ちっちゃい手を広げて
一生懸命に触れようとした花です
表情のないその顔の後ろに
どのような想いをうつろわせているのですか
ここにはもう何年も来なかった
本当に長い年月、ここには来れなかった
たまたま、あの子と仲の良かった女の子に街で出会って
「明日、結婚するんです」って言われた時に
あたしの中で、はじけた物があったんです
それから毎日
あなたはここに来る
雨の日も、傘の下に
もう一つ小さい黄色い傘を持って
この傘は、あの子の傘
捨てることも出来ないで
ずっと持ってました
雨の日は、あの子だって傘が必要でしょ
そんな小さな傘で
あれから何年もたったわ
あの子の友達が結婚するんですもの
それくらいの年月の中で
でも、あの子は小さいまま
あたしは、あの子の大きくなった姿を知らない
あの子は、あたしの中に小さいままでいる
ね、あの子が遊ぶ場所はここだけ
あたしはその事に気がついたの
あの子はここにしか来たがらない
だって、あの子の明確な意識の中に
最後に刻み付けられた場所
あの子のいた証が
一番強く刻まれている場所
それが、ここ
つらかったでしょ
悲しかったでしょ
母さんにあいたかったでしょって
あたしはあの子に話し掛けてあげる
ほら、
あの子が笑顔で駆けて来る
可愛いでしょ
そうして、あなたは
そのまま時間の中に風化して行くのですね
あの子にしてあげられる事がそれなら
それもいいでしょう
あたしにしかしてあげられない事なのだから
夕暮れが
彼女を包み込む
彼女のまわりで
蛍は舞うか
美しいか
do_pi_can ド・ピーカン どぴーかん さて、これから 詩 小説 エッセイ メールマガジン