幼少期、
セピア色に暮れなずむ夕方、
ドボルザークが町中を流れる頃、
打ち水をするあの人の姿があった。
「ユーミー」と言う、
町で、ただ一軒の喫茶店
シミーズ姿のあの人は、
若かったのか、
年老いていたのか、
どんな顔だったのか。

この季節、
夕暮れの湿った風に
必ず乗ってやってくる
この思い出。

山に囲まれた町の
早々とした夕暮れの
水を打つ音、
葉ずれの音、
あの人の笑い声。

そして、
やがて、やって来る
山の神の夜

 

 

僕が幼い頃、確かに山の神の夜があった

do_pi_can   ド・ピーカン  どぴーかん  さて、これから  詩  小説  エッセイ  メールマガジン