「風呂場の慕情」

 

 

 

風呂場の雫のしたたりに

五体が

しなだれていく

 

湯気で

しおたれた髪の毛

 

湯船の中でふやける

手と手と手と

足と足と足と

 

見開いた目で

広げた指を見る

 

湯につけると,

ある角度で

見る間に縮んでゆく

 

縮んでゆく

縮んでゆく

 

この世に生きる恥じらいが

一挙に押し寄せてきて

 

心の空洞に張り付いて

風呂場の壁の

雫の滴りに

呼応する

 

鏡に映る

干からびた姿

 

誰,それ?

誰,それ?

それ,誰?

 

まるで

女の血を吸いそこねた

バンパイアだ

 

「背中から,あなたに支えて欲しい」と,

声に出して言う

支えて欲しい「あなた」を

いろいろと思い浮かべるが,

唯一の「あなた」を思い浮かべられずに

風呂場から

出るに出られず

 

ますます

しおたれていく

 

 

do_pi_can   ド・ピーカン  どぴーかん  さて、これから  詩  小説  エッセイ  メールマガジン

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