「日暮れる寸前の彼岸の絵師」

 

 

 

午後が

ストンと落ちて

残光が山奥で微かにわだかまる頃

街の風景は,魚眼レンズの底に沈みこみ

音達はそのさらに底にある網の目から

中空へと逃げ出すので

どこにいても

人恋しさがうずくまっている。

 

やがて,

灯りが点り始め

光物で遊ぶのが好きな巨人達が

おもちゃ箱をひっくり返したような

ストイックな明滅の波動が大地を覆うのだが

それまでの一瞬の静けさが

自動車の運転をしている時でも

耐えられず,

ラジオの語りかけさえもが

砂にしみ込む水となり

 

あがき始める

 

石段に座って

メールを投げている髪の長い少女の

薄暮に溶け込む寸前に見た

まだ幼い肩の線に

救いを求めるが,

前の自動車のブレーキランプに

我に返り,

救いは,

そこで拡散する

 

ぬくもりが欲しい

 

そんな自分に気がついて

使われなくなったプールに

身を沈め

水面に

星の影が張り付き始めるのをじっと

待つのだが

 

待つことが長いと

浮かび上がる術を忘れ

水が抜かれる日まで

沈みこんだままとなる

 

そんな時は,

そのまま

沈んだままで

春の絵を

描くことと

しよう

 

 

do_pi_can   ド・ピーカン  どぴーかん  さて、これから  詩  小説  エッセイ  メールマガジン

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