「最終電車」

 

くたびれはてたホームに

最終電車がすべりこむ

 

駅員は,その事を,

声高に叫び,

一日を手っ取り早く終えようとする

 

くたびれはてたホームに

妥協と惰性の風が吹く

 

ホームを走る人は,

明日も同じ風が吹かぬよう

ひたすら祈る,

駅員は,それを無視して,発車の笛を吹く

 

くたびれはてたホームに

酔っ払って座り込んだ人がいる

 

耐えられないのだと,大きく開けた口が

言う

誰かに文句を言いたいのだが,

首に開いたエラから,シューシューと

空気が漏れる

 

くたびれはてたホームで

熱い抱擁を交わす恋人もいる

 

彼らには,明日など無くてもいい

今の瞬間は,とりあえず

朝がくると,互いの表情の落差に

鼻白む事も知っているが故の今の瞬間なのだ

 

くたびれはてたホームに

座り込んだ人は,誰にも抱き起こしてもらえず,

誰かに何かをしてもらおうという気もないままに

最終電車をにらんだまま,そのまま

 

くたびれはてたホームの上は,

クタクタのグジュグジュである

最終電車の中も

クタクタのグジュグジュである

 

今晩,泊まる場所を探している人

酔っ払って,自分がどこに電話をかけているのかわかってない人

携帯に向ってクダを巻く人

フラフラとメールを送っている人

飛んでいくメールもフラフラだ

 

どこにぶちあたって

どこに跳ね返ってくるか,

わかったもんじゃない。

だから,クタクタの最終電車の中でこそ

燃え上がる恋もある。

 

ドアが閉まり,

動き始めると,

しばし,匿名性の恋が盛んになる

 

だから,

私も,また,

メールを飛ばしている

 

 

do_pi_can   ド・ピーカン  どぴーかん  さて、これから  詩  小説  エッセイ  メールマガジン

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