「十日月情夜」

 

 

高層ビルの壁面を

なぞりながら,そろそろと

進むは,

10日目あたりの

月である

 

なぜ身を隠すか

恥じる事でもしでかしたか

 

上手く隠れたつもりでも,

窓と言う窓に

映りこみ,

オフィスからオフィスへと

渡り歩くは歴然

 

ビルからビルへ

音も無く飛び移るが

 

何,

飛び移ったときの尻尾が残っている

 

それを目ざとく見つけるのは

恋を語るOL

 

リフレッシュルームの片隅で,

煙草片手にメールを打つ

 

月と同じく

ネオンからネオンへと

飛び歩くのだ

 

その肉厚な

濡れた唇を

癒す酒場を求めて

 

恋の相手の被扶養者に

見つからなければそれでよし

 

月が

身を隠したいは,

まさに,そのような街中の灯りの中に違いない

 

せめて,街路樹を下から照らす

青い光の中へでも

 

うまくいかぬは

この世のならい

 

隠れそこねた月は

私の手の中でビスケットになり

袋破った瞬間に

飛び跳ね

 

割れる

 

割れても末に

会いにけるかな

do_pi_can   ド・ピーカン  どぴーかん  さて、これから  詩  小説  エッセイ  メールマガジン

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