「予測できた小雨の中,一杯のコーヒーを求めてさまよう」

 

 

 

光が

しめやかに断ち切られ

色が失われていく

 

すると,

時間も緩やかに

切り刻まれるものらしい

 

濡れて反射する歩道を走る人の

動作が

ぎこちなくなる

 

窓の向こうに

音は無い

音は

優しく地面に押し付けられる

 

私の時間は

動かない

 

イ短調の曲で

街の形が出来上がる

 

流れるのは

川だけである

 

水鳥が

行きつ戻りつしている

 

電車が

川面を揺らし

通り過ぎる

 

説き伏せられた風景も

揺れている

 

張り出した松の枝と空の風景

 

長靴の音

 

振り向くと

小さい者達

 

網膜に

いきなり色が戻り

時間が動き出す

 

しばし

そのうねりの中に

放り込まれる

 

が,

ひとしきり

ざわめいた後,

世界は再び

色を失う

 

このようにして

塗り込められていく

 

このようにして

温度を失い

 

このようにして

体が鉛と化していく

 

このようにして

原始の世界が死んでいく

 

無機質な景色の中で

私は

方向を持たない一歩を踏み出す

 

do_pi_can   ド・ピーカン  どぴーかん  さて、これから  詩  小説  エッセイ  メールマガジン

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