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夜の雨は嫌いだと
誰かが言った
こらえきれずに泣いているようで
身につまされると
誰かが言った
誰が言ったのか
もう忘れた
昔の話だ
金で買った一夜
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あの街灯の下には
大男がいた
広い肩を
灰色のマントに包んで、
向こうをむいて立っていた。
帰らぬ時を待って、
待ちくたびれて、
こちらを向いた時
そいつは消えた
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さみしさが
冬の不協和音で迫るから
なすすべも無く
共鳴してしまう
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こんな夜中に人声がする
あの田んぼの向こうだろう
誰かと誰かが
大声で喋っている
楽しそうに どなっている
その騒がしさを
少し分けて欲しい
夜は 人を近づけるから
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