T
鳩がこの街で一番高いアンテナに
とまっている
雲の重圧の下で世界を見ている
彼の脳裏にも世界が広がり
飛び立つ
U
洗濯物が揺れている
女が顔を出す
すすけた屋根と
赤いトタンの
表ばかり立派な家を
ツバメが横切る
V
火の見やぐらは
このところ 鳴ったことの無い鐘をぶらさげて、
街を支配する。
その下を
老人が歩いて行く
W
電線の鳥は土気色で
白い空に浮いている
ガラス窓をとおして、
声は聞こえず
ただ、
首をかしげるのが見えるだけ