1
まず最初に
本研修を始める前にお願いがあります
本件修は、社会に出て半年目の皆様に振り返る機会や、さらに前に進む力を得る機会を持っていただく事で、これからの皆様の活躍に、少しでもお役に立てることを願い、実施させていただきます。
つきましては、下記の三つの約束をしていただけますようお願いいたします。
(1)
時間と規則は必ず守る
(遅刻や騒音などで、仲間や施設に迷惑をかけない)
(2)
研修には積極的に取り組む
(たとえ面白くなくても、皆さんの会社は、この研修から何かを学び取って仕事に活かしてくれる事を期待して、皆さんの参加費用を負担してくれています)
(3)
討議時間などの研修中の許された時間帯、自由時間など以外での不要な会話を慎む
(研修中に質問、疑問、意見などがある時は、挙手をして発言してください)
2
本研修の狙い
本研修の狙いは下記の通りです。
(1)
社会人として6ヶ月、この機会に自分を振り返ってみる
今までの自分を振り返り、既に身についており、自分がこれから力を発揮していく上で役立ちそうな「強み」やスキルを見つけます
(2)
社会人として成功するための新たなスキルを身につける
社会人マナーなどは、もう既に身につけておられると思います。
今回は、それよりももう一歩進んだ社会人として成功するための基本スキルとして、「めげない」「切れない」「前に歩き続ける」スキルをお伝えします。
(3)
社会人としてのチーム力を検証する
社会人として、皆様がどのようなチーム力を身につけているか、難局乗り切り型の課題で、チェックしてみましょう。
(4)
社会人としての報告文書の作成力
研修最後に、上司への報告文書を作成していただきます。
どれだけ文章力が向上しているでしょうか。
T.まずは事前課題による振り返りからです
(1)
事前課題をお願いしましたが、やっていただけましたか?
(2)
まずは、事前課題の内容について、@からCについて共有しあいましょう。
(3)
次に、DからFについて、互いに相談に乗りあいましょう。
(4)
相談に乗っている間に気がついた事が、何かありますか?
あれば、下に書き出してください。
(5)
相談に乗ってもらって、解決できたことはありますか?
あれば、下に書き出してください。
U.社会人マナーの復習
事前課題用紙を使用します。
V.あなた方の中に育ちつつあるもの
では次に、あなた方の中に育ちつつあるものについて検証しましょう。
(1)
社会人基礎力について覚えていただいていますか?
社会人基礎力は経済産業省が、社会人になる人に、ぜひ身につけておいてもらいたいスキルとして設定しました。
別シートを使って、まずは、自己分析として、自分の能力がどれだけ身についているかを感覚でレーダーチャートにつけてみてください。
次に質問紙でチェックして、その結果をレーダーチャートにつけてみてください・
自分の感覚よりも質問紙の結果の方が低い要素は、まさに今、自分にとって必要だと感じて、伸ばしつつある要素です。
自分の感覚よりも質問紙の結果の方が高い要素は、今までに必要な場面があって、自分が思っている以上に伸びている要素です。
(2)
下記に、これから伸ばしたい社会人基礎力と伸ばす方法を書き出しましょう。
W.
「強み発見」
ドナルド・O・クリフトン博士によると、人間には34の「強み」があって、一度身についた「強み」は、終生変わらないものだと言う事です。
34の「強み」は、次のように大きく5つのカテゴリーに分けられます。
@
「人間関係」に関するもの
A
「他人への影響力」に関するもの
B
「行動力やモチベーション」に関するもの
C
「より深い思考」に関するもの
D
「結果を求める思考」に関するもの
ここでは、「行動力やモチベーション」に関する強みをチェックしてみましょう。
「行動力やモチベーション」は、
達成力、活発性、信念重視、自我意識、規律性
適応力、目標志向、回復志向、自己確信
の9つの「強み」に分けられます。
では、別紙の「強み」発見をやってみてください。
(1)
あなたの一番の「強み」は何でしたか?
(2)
その「強み」は、あなたをどのように助けてくれると思いますか?
X.
社会人として、さらに大事な力とは何?
(1)
「めげない力」
まずは、「めげない力」から
「めげない力」とは、多少のハードルでも乗り越えてしまえる力です。
また、何度失敗を繰り返しても、必ず立ち直れる力の事を言います。
「めげない力」は、世界中の人々が手に入れたいと考える力のようです。
そこで、多くの研究者が研究し、その結果を発表しています。
一つ言える事は、ある方法について、『これが「めげない力」を手に入れる方法だ』と研究発表が出されたとしても、それは全ての人にあてはまるのでは無いと言うことです。
という事は、「めげない力」を手に入れる方法は、たくさんあって、いろいろと試してみるのが良いのだと言う事です。
「100パーセントこれでOK!!」という人の話は、あまり信じない方が良いようです。
「めげない力」を手に入れる方法
@
自分に小さなハードルを設定して、それを越えるたびに自分で自分を褒める。
仕事でも何でも、自分で超えやすいハードルを置いて、ハードルを越える喜びを身体に覚えさせておきましょう。
誰も褒めてくれない時は、自分で自分を褒めましょう。
たとえば、「今日は、これがやれたから、まぁ、いいや。自分は素敵。」
マラソン選手も、あそこまで行こう、あそこまで行こうと、ちょっと先の目印を決めて、最後まで走りきるそうです。
A
ストレス発散の方法をたくさん用意しておく
ストレスは良い仕事をする源泉ですが、あまりに大きなストレスや長く続くストレスは、心身を傷つけます。
ストレスは適度に発散するのが良いのですが、その方法を一つ二つしか持っていないと、その方法が効果を発揮しない時、それができる状況に無い時に困ってしまいます。
気を抜ける方法を日ごろからたくさん見つけておきましょう。
空を見るとか、花を見るとか、良い匂いをかぐとか、いろいろありますね。
B
相手を思いやり、小さな事にも感謝する
人間は、何十万年も、互いに護り合いながら生き延びてきた生き物です。
相互作用が非常に大事であると言われています。
互いに影響を与え合うこと、感謝することも、感謝されることも、「生き延びる力」=「めげない力」の源泉のようです。
それが原因だからなのでしょうか、例えば、同じように重い病気を抱えた人同士でも、ボランティアをしている人の方が、していない人より生き延びる率が高いという報告が多く出されています。
C
一日30分歩く
信じられない話かもしれませんが、「歩く」という行為は、人間の心身に非常に良い影響を与えてくれると言われています。
一日に30分、できれば5分早足、5分ゆったり速度を交互に繰り返してください。落ち込んだ気分の時は、あえて、膝を高く上げて歩いてください。
D
一日に一食は、必ず、ゆっくりと味わって食事をする
心が折れた状態は、やがてどんどん身体の感覚を喪失させていきます。
一日のうちの一食は、ゆっくりと心から味わって食事をしてください。
食事は、脳の近くで、視覚、聴覚、嗅覚、味覚、触覚の五感を働かせるもっとも良い行為です。
身体感覚を戻すことで、心の折れた状態から回復できる可能性もあります。
E
「よし、もう大丈夫」と声に出して言う
人間の言葉は偉大です。自分で自分にかけた言葉で、影響をうけてしまう事もあります。そうなればラッキーです。
だまされたと思って「よし、もう大丈夫」と声に出して言ってみてください。
最悪の状態の時は「なんてことないし、ここから、ここから」と声に出して言ってみてください。
「なんちゃないき」とか「せわーない」とか。
F
何か別の事に夢中になる
何かに夢中になると、人間は冷静になれるようです。
心がめげそうな時、全く違うものに一旦は夢中になって見るというのも良いことです。
ただし、簡単に手に入って、夢中になりすぎるもの(酒、ギャンブルなど)は、依存してしまう可能性があるので、避けましょう。
ちょっと努力のいる事、例えば、釣りとか、山登りとか、ジョギングとかが良いのです。
(2)
「きれない力」
仕事などで最後には成功する人のパターンだとされるものの一つに「きれない力」というのがあります。
「きれる」と言う状態は、「めげる」という状態と類似しており、自分を抑制できなくなって、冷静に判断できなくなった状態と考えても良いでしょう。
ですから「めげない力」を手に入れた人は、「きれない力」も同時に手に入れている可能性が高いのです。
しかし、「きれる」ほうが、「めげる」より、何だか強烈な感じがしませんか。
それは、「きれる」が身体の変化を大きく伴うからかもしれません。
「きれる」と、頭がカーッとなって血の巡りが悪くなり、たまに何を言っているのかわからなくなり、心臓の鼓動は激しくなるわ、息は浅く早くなるわ、たまらなくなって、つい足元にあるものを蹴りつける、投げつける、てことになりませんか。
後で後悔するのに、「こんな会社やめてやる」と叫んでいる事だってありますよね。
どうやら、「きれる」方が、身体の変化が激しくおこるような気がしますね。とすると、身体のバランスの制御から行うのが良いような気がします。
「きれない力」を手に入れる方法
@
ゆったりと落ち着いた状態の時に、自分の身体の変化を知る
人間は意識を身体の一部に集中させる事で、その場所の変化を知る事ができるようです。
ゆっくりと落ち着いた状態の時に、自分の身体のいろいろな場所に意識を集中し、その状態を知っておくのも大事です。
特に、カーッとなるとすぐに変化のおこりやすい場所、こめかみとか、首筋とか、肩とか、眉毛とか、後頭部とかの通常の状態を記憶しておき、きれそうになった時に、その状態を思い出そうとするだけで、少しはきれずにすむ事もあります。
A
一日数分で良いので、瞑想呼吸をする
だまされたと思って試してみてください。
まず肺の中の空気を吐ききって、鼻から、ゆっくりと息を吸う、その時、空気が脳の前頭部を清めてくれるようなイメージで吸うのも良い。
吸いきると、一呼吸おいて、口からゆっくりと吐き出す。吸う時の二倍から三倍の時間をかけてはき切ってください。
これを、座っていても、寝ていても、どっちでも良いので、一日数分やってください。
即効性はないですが、早い人だと二週間くらいで自分の変化に気がつけます。
B
逃げ方を研究しておく
きれそうになった時に、きれる対象から一時的に逃げるというのも効果があります。うまく人生を乗り切るために、逃げるのは恥ではありません。
あの伊達政宗でさえ、豊臣秀吉や徳川家康の脅威から逃げました。
逃げるというのは、気分を変えるために、場所を変えると言う意味です。
しかし、上司の言葉にきれそうになった時、いきなりその前から立ち去るわけにはいきません。失礼にならないように、しかるべき言葉を述べて、その前から立ち去るのが大人です。日頃から、この人からはこんな逃げ方をしよう等と考えて、逃げる研究とリハーサルをしておきましょう。
C
身体のどこかや動作に、きれられなくなるポイントを設定しておく
これはちょっと高等テクニックです。
冷静な時に、こういう動作をしたら自分は「きれられない」と思い込ませるのです。あまり目立つ動作はよろしくないので、例えば、鼻の右側を押すとか、左手の親指をぐりぐりするとか、きれることができなくなるポイントを設定するのです。
そこにきれられないポイントを作り出すコツは、今までにとても幸せだった頃の事を思い出して、その雰囲気に浸り、幸せの絶好調の一歩手前で、決めた動作をしてみてください。それを三度ばかし続けます。
うまくいけば、その動作をすると力が抜けて、きれられなくなる可能性があります。
D
きれる自分にラベルを貼る、親しい友人にも伝えておく
これもちょっと高等テクニックです。
きれる自分に、自分とは違う名前(ラベル)をつけてしまいます。
そして、きれそうな時に、その名前で自分を呼ぶのです。
親しい友人にも伝えて、きれそうな雰囲気になったときに、その名前で呼んでもらいます。
うまくいけば、自分を客観的に見ることができて、理性が戻ってくることがあります。
(3)
「前を向き続ける力」
多少の事があっても前を向き続けられる力も、誰もが欲しがる力の一つです。
しかし、何でもかんでもやみくもに前向きにとらえてしまうと言うのは、大きなリスクを抱え込んでしまう可能性も高いですよね。
盲目的な動きしかできなくなってしまえば、その先に、どんな落とし穴が待っているか判断できなくなります。
これは、どんなに優秀な人でも陥ってしまう状態でもあります。
したがって、ここで必要なのは“理性的に”「前を向き続ける力」です。
アーロン・アントノフスキーというイスラエルの心理学博士は、「SOC理論」という説で、この“理性的に”「前を向き続ける力」を説明しています。
「SOC理論」とは、日本語では「首尾一貫理論」と訳されていますが、これだけでは何の事か、さっぱりわかりません。
この理論は、とても抽象的です。
が、この理論は、実際の調査を元に、どんな厳しい条件の中でも、「前を向き続ける力」を持った人から得られた理論なのです。
「SOC理論」は、「把握可能」「対処可能」「有意味」の三つの柱からなります。
社会人として、ぜひ身につけておきたい力でもあります。
以下に、それぞれの柱を確認していきましょう。
「前を向き続ける力」を手に入れる方法
@
「把握可能感」
「把握可能感」とは、自分がどのような状況にあっても、自分が置かれた状況などを冷静に把握し、次に自分に何が起きるかも予測し、把握する事ができるという感覚です。
自分を冷静に保つには、「論理的に予測する」という事が大事だといわれていますが、まさにこの「把握可能感」がそれです。
この力は、「めげない」「きれない」力にも通じます。
「把握可能感」を身につけるには、トレーニングが必要です。
一番冷静になれた時に、自分の今の状況を客観的に見つめる練習をする。
新聞の社説、論説などを読んで、言語力を高める練習をする。
などです。
A
「対処可能感」
「対処可能感」は、冷静に把握したり、予測した状況に対して、「しっかりと理性的に対処できる」感覚です。
一時的に感情に流されたとしても、すぐに自分を取り戻し、自分が今やらねばならない事を見極め、決めたとおりの事を実行できるという自信でもあります。
軍の特殊部隊の兵士達は、徹底的にこの能力を鍛え上げます。
という事は、トレーニングでこの力を身につける事が可能だと言うことです。
軍隊ではないので、厳しい環境などは不要ですが、取り急ぎ動かねばならないような事態で、一歩踏みとどまり、本当にその行動が正しいかどうかを考える癖を身につけておくなどが、この力を鍛える方法でしょう。
B
「有意味感」
冷静に状況を把握し、把握した状況に対して理性的に対処する事で、「前を向き続ける力」が得られるかもしれないとお伝えしましたが、さらにもう一つ、「そうする事が自分や自分の周囲の人にとって非常に意味のあることだと確信できる力」があれば、どんな時にでもぶれない自分でいられる可能性が高いとされています。
これが「有意味感」です。「信念」と言ってしまって良いのでしょうか。
「自分や自分の周囲を信じる力」と言ってもいいのかもしれません。
この力もトレーニングが必要です。
小説などを読んで、他者への共感力を高める。
宗教書、哲学書を紐解いて、自分や自分の周囲の人への見方をさらに掘り下げたものにする。
楽しみばかり追いかけずに、時には自分にとっては苦痛な体験もしてみる。
などによって、この力が高まる可能性があります。
「前を向き続ける力」は、トレーニングシートなどを作成し、系統的にトレーニングしていくのが良いかもしれません。
最初からいきなりハードルを高くしてしまわず、できる事からはじめて、少しずつ力をつけていくのが良いのでしょう。
少しずつで良いので、ぜひ、覚えておいて身につけていってください。
(4)
さて、あなたは、具体的にどのような事をして、上記の力を手に入れますか?
上記に述べた力のどれでも結構です、今日からできる事で、上記の力のどの力を手に入れますか?
手に入れたい力を一つ、それを手に入れるために、具体的にできる事を三つあげてください。
Y. 「チームで難局を乗り切ろう」ゲーム
さて、ここで簡単なゲームで一息入れましょう。
「チーム難局を乗り切る」ゲームです。
身体を動かす必要はほとんどありませんので、フルに頭と口を動かして、ゲームに取り組んでください。
Z. 上司への報告書
さぁ、もっとも楽しい時間がやってきました。
前回と同じく、上司への報告書を書いていただきます。
書いた報告書は、自分で持ち帰り、自分で上司に手渡してください。
後で、ちゃんと手渡されたかどうかを確認します。
手を抜かずに、しっかりと書いてください。
フォーマットは、皆さんが前回学ばれたフォーマットでも良いですし、この半年間で、皆さんの仕事の現場で学ばれたフォーマットでも結構です。
どうしても分からなければ、隣の人に聞いてください。
黙ってやる必要はないですから、いろいろと話し合いながら取り組んでください。
課題は、「今日の研修についての報告」です。
早く終わられた方は、時間が来るまで待っていただいて、連絡事項や終わりの挨拶の後、退室いただいて結構です。
その時点で、まだ書き終えていない人は、私が付き合いますので、明日の朝まででも、気が済むまで報告書を書いてください。