全くの偽善者であったと、私は今になって後悔している。人を蹴落とす奴は嫌いだと、お前に言ったが、実は、私自身がその立場だったのだ。お前を苦しめる男を殊更に悪し様に言ったが、すべて感情論であった事に気が付いたのは、お前と別れた後だった。自分のピエロを見たくなかったばっかりに、へたな説教をしてしまった。説教の後で、羽交い締めにして弄んだ時、お前は、「ひどい、ひどい」と泣きそうになった。結局、私も、お前を苦しめた男と同類なのだよ。いや、あの男の方が素直で、まだ良心的かも知れない。私は、エネルギーのはけ口としてお前を弄んだ。でも、そうしきれなかったのは、お前に本気になって行く自分を感じたからだ。自分の心を押さえることができなくなりはじめたからだ。お前は、私に「ありがとう」と言ったけど、言いながら、しがみついてきたけど、その時の私には、それでも、お前の肉体しか見えてなかったんだ。「男ってそんなものなの」「ああ」と答えたが、そうじゃない。もっと、もっと、本気でお前を愛してくれる男がいるはずだ。お前の過去を愛するんじゃなくて、お前自身を、お前の素直な心を、お前のきれいになった体を、愛してくれる男がいるはずだ。許しておくれ。私は、最後の最後までピエロを演じきれなかった。許しておくれ。