君が立ち上がって
光の頂点が
破裂する
その部屋に
確かに冬がいた
その片隅の
畳の擦り切れたところ
張り詰めた君の肌を通して
問いかける者,
君の若い細胞と血液の色をまとい,
産毛をゆらり揺らして
手を差し伸べる者を避け,
さりとて,陰湿に身を隠すでもなく,
何食わぬ顔で
さらりと,そこにいた
それは,一瞬,垣間見え
消える,次の季節
それを透明にするのは,
夏の濃厚な光ではなく
冷気をつき抜け
まだ踏み割られていない薄氷で跳ね,
刷りガラスの欠けた断面をプリズムにして
だるまストーブから立つ湯気の間をすり抜け
破裂する
素早い光だ
捕まえるには
光を押さえ込まねばならない。
つまり,
ガラスに蝋燭の炎で黒く煤を塗り,
周囲をすかして見ることだ。
あるいは,光の破裂を鏡に掬い取り,
運動場の端の白壁に
ぶつけてみるのもいい。
そうすると
飛散する光の
すべての断片に
冬の正体が
映りこむから
朝一番の氷柱に網を
結びつけて
覆いかぶせれば
冬は
その中に入っている
が,
決して手に取ろうと
してはいけない
一見しなやかな冬の中には
ブリザードが激しく吹き荒れていて
身も心も
取り込まれてしまう
凍えることへの凛とした憧れ
立ち上がった瞬間の君は
そんな冬を
見せてくれる