南の海を漂う女であるか

南の海を漂う女であるか,君は。

熱き思いを波に乗せ

椰子のごとくに波に揺れ,

流れ着く先はハバナか,カルタゴか

飲めもせぬ強い酒を前にして

男のように足を組み

葉巻の煙にむせながら

明日は,ハイチに出向くか,カサブランカにするか

とりあえず,サイの目の数だけ進む

出たとこ勝負を乗り切るのだろう

 

都会は,相も変わらず慌ただしい

ねずみ色の猫背の集団がレミングよろしく闊歩する

だから,アロハシャツでは歩けない

癖のある,南の葉巻は似合わない

だからせめて,ネクタイをはずして,

ジャズを聴きながら,通り過ぎるヘッドライトを見ている。

今日は,少し暖かいのが,せめてもの救いか

 

君よ,

南の海を漂う女よ

万が一,人知れぬ浜辺に流れ着いちまって

話し相手もいなければ,

我が心を思い浮かべよ

我が姿は,決して思い浮かべてはならない

生身はあまりに重過ぎて,

波間に沈むのが落ちだからね

我が心を思い浮かべれば

君の前に立つ一人の少年を見るだろう

少年から見れば,

君はただの椰子の実に過ぎないが

彼は,必ず毎日,君に水をやりに通ってくるだろう

やがて,君も芽を出し木となりて,

少年も成長し,君のよき話し相手となるだろう

 

やがてまた,波間に流れ出す時まで,

そのように,心静かにすごせばよい

 

そのように,漂う女であるように見えるよ

君は

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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