「ブルースな店」


声高に喋る訳知り顔の女のサイレンのような
けたたましさの
その向こうに流れるブルースを
聴きたいのだ俺は

季節外れの沖縄のあっけらかんとした
空気を持ったこの店の
高いコーヒーをわざわざ注文したのは、
こいつらの喧騒を聞きたいがためじゃない。

外では
冷たい風が吹いている
窓が壊れてしまらなくなった車で
小一時間走ってきたから
体が冷え込んで
おまけに小雨も降り出して
この季節だから氷雨だなんて、
ド演歌発想も馬鹿馬鹿しく、
カラッとしたいんだよ
俺は

乾燥機にかかったみたいに

二十歳過ぎの
若い女達の声に知性も無く
年並みの穏やかさぐらい
身に付けられないのかと
人事ながら腹立たしい
こんな奴らが
これからの社会を支える子供を
育てていくのだ
なんて、
おっさんの愚痴がついて出る

カラッとさせてくれよ

社会は、お前らが思っている以上に
厳しい
厳しいんだよ
と、心で叫ぶ

だから、
カラッとブルースが欲しいのだ

一時のゆとりが
欲しいんだよ

お前らみたいに
若い女にゃ
わからねぇ
わからねぇだろうな
おそらく

わかって欲しいとも
思わねぇ

だから
せめて
静かにしててくれ


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