「白亜紀の雨」



朝方から
激しさを増した雨を額に受け
白亜紀を思う。

雨は
九州地方を巻き込み
中国地方に至る

間もなく
近畿地方も集中豪雨が襲い
警戒警報が発令されるに違いない

白亜紀の原始のエネルギーがこめられ
現代の我々を慌てふためかせる
今日の雨よ

ぬかるんだ大地の
そこここに
恐竜の足跡が記され
雨水が溜まり
水草が繁殖するのだ

この雨を
額に受け
現代に懲り固まった思考を
溶解させたい思い
熱く喉元にこみ上げつつ
旅客機は
空に駆け上がる

ジェットの噴流は
雨を押しのけ
雨は
抵抗を試みつつ
大地を覆う

雨雲は思いの外、低く
どこかの家の窓辺にもたれた少女の
面影が消えぬうち、
飛行機は雲の上に突き抜ける

喉元にこみ上げた思いは
一瞬行く宛てを失うが、
高野の上空から
紀伊の山々に至る一面の雲の層に
そこを駆け抜けたい思いとなって、
さらに拡大する

白亜紀の雨は
その喉元に降る
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