「かつて夕陽の中に佇む君は」
かつて、夕陽の中に佇む君は、
故郷に思いをはせる一匹のせつない狼だった
かつて、夕陽の中に佇む君は、
牙を抜かれまいと踏ん張る一匹のけなげな狼だった
かつて、夕陽の中に佇む君は、
捨てきれない愛に遠吠える一匹のさみしい狼だった
そして、君の心は確実に、狼として燃えていた。
そして、君の心は確実に、狼として飢えていた。
そして、君の心は確実に、荒野を彷徨っていた。
今、君を知る者はなく、
君を思い出す者は誰一人いない。
かつての荒野に荒野はなく、
君を追い立てるものは、
君自身のススキのような影であったのに。
なのに、なぜ未だ夕陽に佇み続けるのだ。
なぜ色褪せた牙を晒し続けるのだ。
なぜ夢と言う満身創痍の幻影にこだわるのだ。
かつて君は、空きっ腹を抱えて彷徨う、
一匹のちっぽけな犬であった事に
誰もが気づいた今でも。
その事に、君自身も既に気がついている
今であっても。
君は、なお夕陽の中に佇み続けるのだ。
do_pi_can ド・ピーカン どぴーかん さて、これから 詩 小説 エッセイ メールマガジン