「朝を待つ」

 

 

先程まで

全天に這いつくばっていた

台風一過の雲の一群は

地平の彼方に

姿を消し

透き通った空気の中

夜に向って

空が

抜けた

 

都市が

抜けた空を

駆け上がり

光が

意志となり

時間が

朝に

進み始める

 

あの

光の羅列の中に

潜んで

いるという

希望という名の

落とし穴

 

 

それは,

出会いの姿か

それは,

未来形の言葉か

それは,

動き始めた胎児か

 

 

間もなく

夜明けだ

 

 

薄明かりをぬって

走るものが

いる

 

車の通らぬ路上を

リヤカーの男が

うつむきながら通る傍ら

冷気と共に

駆け抜けるものだ

 

無くてはならぬ

ものでありながら

あやふやで

誰にも

その姿を見せぬもの

 

が,

 

朝日が

寝乱れのままに

顔を出し

乱数表片手に

あちらこちらを

指差す時

 

アタッシュ片手に

始発の地下鉄より

現れ出でた一人の詩人によって

その姿は

暴かれ

衆知に

さらされる

 

何も持たぬ事のみが

武器である

詩人によって

 

太古の水蒸気をも

含む姿そのままに

 

 

都市は

毎日

そのような朝を待つ

 

 

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