「だって,ミゲルは恋が上手いのだもの」

 

 

 

 

だって,ミゲルは恋が上手いのだもの

あたしの心をたちまち虜にして

あたしは,丸一日,

ローズオイルの中でマッサージを受けた

貴族の娘のような気持ちになる

 

 

それでいいのよ

だって,恋の下手な男といても

退屈なだけじゃないの

朝から晩まで働いて,

落ち込んだ気持ちを晴らしてくれないし

 

 

嫌な上司や

嫌味な同僚達の間で傷ついた

あたしの心

やさしく,やさしく

もみほぐしてくれるのよ

ミゲルは

 

 

別に,ミゲルの素顔なんて

知りたくないし

一人になったミゲルが

何してるだなんて

あたしには関係の無いことだし

 

 

あたしの前では

恋の上手い男であってくれればいいの

恥ずかしげも無く

歯の浮くセリフを言ってくれればいいの

 

 

あたしが結婚しても

時々,現れてくれたらいいの

亭主のいないベッドを

温めてくれたらいいの

 

 

だって,ミゲルは恋が上手いのだもの

 

 

だって,あたしは恋が下手だもの

 

 

 

do_pi_can   ド・ピーカン  どぴーかん  さて、これから  詩  小説  エッセイ  メールマガジン