「空の揺らぎに時を聴く」

 

 

空の揺らぎに

時を聴く

 

張り詰めた冷気に

遠い人を想う

 

サラサラと舞い落ちるのは,

感動と名づけられた

記憶である

 

あなたの細胞の随所で

森羅万象が

目覚め始める

 

言葉の追いつかない厳しさが

あなたの肉体を凝縮する

 

有機物と無機物が

スパークする

 

滲み出るのは

『真理』という

宇宙のささやきだ

 

あなたは,

テントの中から

真っ黒に日焼けした顔を突き出し

輝きを増し始めた極北の空に

シャッターを切り続ける

 

今でも

 

 

カリブーが目覚め

アザラシが目覚め

グレイ・ベア―が目覚め

オオカミが目覚め

ハクトウワシが目覚め

 

氷河の突端で

あなたという

イニュニックが転生し

魂の海に崩落する

 

そこから生まれ出た青い光が

空に立ち昇る時

 

雲を突き上げた

クジラのあばら骨のまわりで

小さな花が咲き

 

花が

取り残され色の褪せた古いテントを

覆い尽くす

 

シロクマでさえも気付かずに

行き過ごしてしまうそのテント

 

あなたは

今でも

そこから顔を出し

シャッターを切る

 

そして,

空の揺らぎに

時を聴く

 

存在と言う名の

確かな時を

輝きを

 

 

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