「希望の旅」

 

 

 

今から俺達は旅に出るのだと,

写真は語っている。

男同士,若者同士

車を連ねて海へ

女の子を引っ掛けて

楽しむのだと,

写真の顔は満面に語る。

 

 

大きな工場が

また閉鎖するらしい

四千人の希望退職者

人生の半ばで悩む父や兄の顔

睡眠薬を買う

精神安定剤を求める

電車が何度かストップし,

新聞の三面の片隅,

著名人の死亡記事のちょっと上くらいに,

「何万人の足に影響した」と,

小さく記載される。

親族以外に,その記事に目を止める者もない。

 

 

ともあれ,

我らは

海へ向う

増えすぎたネズミのように

そこに行けば,

楽しめる

ビーチパラソルの本数くらいには

 

 

今年も家族を

何処にも連れて行ってやれなかったのだ。

だから,せめて,

日帰りの小旅行にでも出ようと思う

時間は有り余っている

贅沢しなくとも

皆で,語り合う時間を持てれば

楽しいはずだ

昔のように

家族一緒に

季節はずれの海であっても

宿泊しない温泉であっても

口喧嘩をしても

お金が無くとも

 

 

 

先が見えなくとも