「夏の終りの雨中」

 

 

 

季節を斜め読みするのは,

今が丁度いい。

いまだ夏が名残ると言うのに,冷たい雨が降り続くこの時こそ,

電車のシートで化粧する女の視線で,

季節を読む

 

梅雨は,人の命と引き換えに夏になるのだと,

土砂崩れの多い地方出身の友人が言った

そうすると,

夏も,人の命と引き換えに稲実らせるのだと,

水害と稲作の地の人は考えるのだろうか

 

命の

はかなさを考える

そこに

季節が見えてくる

 

雨続きでも,

蝉は鳴かねばならない

そうでないと,

七年間も土の中にいた意味そのものが

否定される

 

この雨続きで

稲は不作だと言う

それでも,

稲は実をつけねばならないのだろう

秋を待つために

 

あなたは,

この雨の中,

胸かき抱いて,

予感の深さとはかなさを測る

そこから,

秋が見えてくる

 

あなたの

その素肌こそが

人の命の証明であるのかもしれない

と,一人の詩人が言うだろう

 

季節を斜め読みする時

夏の終りは,

雨に透けたあなたの白いブラウスの胸元から

立ち昇るのだ,と。

 

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