「路上の君に出会う時」

 


 

僕の歩くこちら側は

確かに路上であったが

君のいるそちらは,

タクラマカンの片隅に

静かに栄えるバザールかと

思えた

 

そこに君は,

真っ直ぐな目で座っていた

その日は,

真っ直ぐな目をした者は,

他にはいなかったので,

遠目で見ても,

すぐにわかった

 

路上の者達は

流れていたが

君は,流される事無く

傷つきやすい生身の身体を

置いていた

 

君の足元には

沢山の心が並べてあり

その心も,

君同様に

真っ直ぐに語っていた

 

やさしいのや,

なよやかなのや,

めそめそしたの

おおらかなの

力強いの

 

それは,

今の君であったり

かつての君であったり

君の原風景であったり

した者達だ

それらを

取りも直さず,さらす事が

君の今の生業だ

 

さらされたそれらを

路上の者である僕が

さらってゆく

 

今日は,

丸く,おおらかで,やさしい

おそらく君の原風景を2枚

 

代価を支払う時,

それは,代価と言う意味合いを失う

 

さらったはずの僕は

実は,それらが君から手渡されるのを

予定されていた事を知る

 

君の手先から,僕に向けて

一陣の風が吹く

タクラマカンへおいで,と

そこで気がつく

僕こそが,さらわれる者であった

 

路上の側から

タクラマカンのオアシスの側へ