「そこに君の心がわだかまっている」

 

 

 

風が出て

細い細い風の声がして

 

塵の多くが飛ばされて

夜景がいつもより鮮やかで

 

向かいのベランダの窓が

開け放たれたままになっていて

 

白いカーテンが大きくなびいている

 

時々,そのベランダで長電話している君

 

そんな時は,邪魔をせぬように

そっと,姿を隠しているのだが

 

今日は,

部屋の電気も消され

 

君の姿も無く

 

ただ,カーテンが揺れている

 

 

 

「もう,終わったの」

 

 

「やっと,前を向いて歩いて行ける」

 

 

「いいの」

 

 

「だって.....」

 

 

 

台風が

南の海で発達している

 

そのせいで,

夜空に厚く雲がかかり

 

夜景が

雲に映り込み

 

雲が小さく喘いでいる

 

 

 

「どうしようもないでしょ」

 

 

「あきらめてたの」

 

 

「でも,あきらめきれなかったの」

 

 

 

 

君の

体の上を通り過ぎた

 

熱い熱い動揺

 

も,冷め切らぬのに

 

君は

何で心なぐさめるのか

 

あらかじめ失われていた恋の行方

 

 

 

「なぐさめてくれなくてもいいわ」

 

 

 

そう言いながら

細い肩をこちらに向ける

 

そこに

君の心がわだかまっている

 

 

もう,風も涼しいので

そっと抱きしめてあげることにしよう

 

今度は

上手な恋ができるように

 

 

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