「友よ ― 不確かな街からの手紙 ―」

 

 

 

友よ

ここを埋めるものは,

不確かな確実だ

 

どれだけ風が吹いたって,

何度,理想が破裂したって,

真実などは見えてこない

 

毎時,毎分,

何本もの列車が到着し,出発し,

大量の幽霊達が

吸い込まれ,また,吐き出されていく

 

幽霊を見下ろすのは,

大きな顔の女の微笑だ

胸の丸みを意味ありげに隠しつつ

つるりとした肌で

何度も何度も

無表情に

微笑みかける

 

列車は

何処から来るのか

いたるところの廃墟

廃墟より来たりて,

新たなる廃墟へと去る

 

廃墟は

日毎,新たに作り出され

幽霊達も

常に増産される

その連鎖を司るのが

空に向って

何層にも積み上げられた

カタコンベだ

 

かつて

夢の終着点であったもの

かつて,

幽霊でなきもののために

作られるはずだった

カタコンベ

大から小まで

幽霊は

これらカタコンベより始めて,

別のカタコンベに移動し,

終わる

(ソノギャクモ アリダ)

 

幽霊などと言う

最も淡い有機物質の結合体など

時の中で埋もれてしまうだろうが,

このカタコンベだけは,

友よ,

君のいる世界まで,

消滅する事なく

しっかりと残されるだろう

そこから

君達の再構築は始まるのだから

 

友よ,

この世界に来るのは

難しくない

 

自分を

淡い有機体だと信じて

列車に乗ればいいのだから

淡いが故に

さらに寄り添う

他の幽霊が見えてくる

問題は

帰る方法だ

 

僕のように

幽霊から孤立しても

帰りようが無いのだ

何をしたって

淡い有機体でしかありえない

 

友よ

ここを埋めるものは

不確かな

確実だ

 

だから

手を差し伸べるのは

やめたがいい

 

僕は

ここで生きて行く

 

その残骸を

後日,拾えるチャンスがあるならば

拾ってくれればいい

 

 

 

 

 

 

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