「海があなたを受容するのは,あなたが....」

 

 

 

赤い谷間を染める月が

凪いだ海の底へと

落ちてゆく

 

波間の暗がりに

赤が滲む

その辺縁に蠢くのは,

青い夜光虫だ

 

沈みゆくあなたの死体に

波が触れる,そこから

夜光虫は,静寂と共に

ざわめき出る

 

もはや動かぬあなたは,

かすかに手をあげ気味にして

宇宙の彼方を指し示している

 

その手は

なよやかで白い

 

死して

なお白い

 

絡みつく

幾条かの黒い長い髪が

より,あなたの肌の白さを際立たせる

 

その白い手で,

指し示された宇宙の

ずっと先の銀河

 

浮き出たあなたの

静脈を飾るに

ふさわしい銀河が

あなたに集合する

 

あなたの指に絡め取られた

銀河の星々の片鱗が

もしかして,

夜光虫であるのかも知れない

 

そんな無駄な思考を

今はもう,なじる事も無く

あなたは,波間に

沈みゆく

 

満天の星を

抱えて海は

あなたを

受容する

 

夜光虫は

さらに

青い

 

 

 

 

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